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筈井利人「陰謀論を笑うな!」

CIA、米主要メディアと強固な協力関係…偽ニュース流布で軍事介入、職員が記者活動も

文=筈井利人/経済ジャーナリスト
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論調にも介入

 ジャーナリズムとの協力体制は、53年のイランのクーデター、54年のグアテマラのクーデターなどCIAが画策した海外軍事介入で特に効果を発揮したとみられる。

 ニューヨーク・タイムズ紙はイランのクーデター前夜、西側の利益に反して石油国有化を断行したモサデク首相をつねに独裁者と呼んだ。他の新聞はモサデクをヒトラーやスターリンになぞらえた。ニューズウィーク誌は、モサデクの支援により共産主義者がイランを乗っ取ろうとしていると報じた(野口英明『世界金融 本当の正体』<サイゾー>)。

 メディアは報道に対するCIAの露骨な介入も受け入れた。ジャーナリストのエバン・トーマスによると、CIAでモッキンバード作戦の海外工作を担当するウィズナーは、ニューヨーク・タイムズ紙メキシコ市支局のシドニー・グルソン記者の記事がグアテマラ左翼政権の影響を受けすぎているとみて、同記者を黙らせるようダレス長官に進言した。しかるべき電話連絡の後、同紙のサルツバーガー発行人は、グルソン記者にグアテマラに入国しないよう命じた。同記者は反政府軍の調査にちょうど着手するところだった。

 タイム誌でもグアテマラ担当記者はたいていアルベンス大統領率いる左翼政権に同情的な記事を送ったが、ニューヨークの編集局で同政権に厳しい論調に書き直された。記者たちは政府の介入を強く疑っていたという。

 ジャーナリストのティム・ワイナーによると、ダレス長官は電話一本で、メディアのニュースの内容に口を挟むことができた。気に染まない海外特派員を現場から外させたり、タイム誌のベルリン支局長やニューズウィーク誌の東京支局長をCIAの仕事に協力させたりもできた(ワイナー、藤田博司他訳『CIA秘録』上巻<文藝春秋>)。

メディアを日常的に監視

 情報のリークや介入許容より、さらに踏み込んだ協力関係もあった。

 ニューヨーク・タイムズ紙のサルツバーガー発行人はダレス長官と密約を結び、少なくとも10人のCIA職員に記者または事務職員として海外支局で活動できるよう取り計らった。同紙の本物の記者は、外国のスパイの可能性のある人物に関する情報などをCIAに渡すよう奨励された。

 タイム、ニューズウィークの両誌やCBSも同様の取り決めをCIAと結んでいた。放送局ではCBSとの結びつきが特に強かった。同社はワシントン支局長とCIAとの間に正式な伝達経路を設け、ニュース映画ライブラリへのアクセス権を与えた 特派員によるワシントンとニューヨークのニュースルームへの報告を、CIAが日常的に監視することを許した。

筈井利人/経済ジャーナリスト

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