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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

【朝鮮半島危機】有事なら約6万人の在韓邦人の安全確保に懸念、日韓政府の対策未確立

文=渡邉哲也/経済評論家
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【朝鮮半島危機】有事なら約6万人の在韓邦人の安全確保に懸念、日韓政府の対策未確立の画像1竹島に上陸した韓国の国会議員団(写真:AP/アフロ)

 北朝鮮をめぐる情勢が緊迫化している。当初、「Xデー」と目された4月15日の金日成元国家主席の生誕記念日は事なきを得たが、25日には朝鮮人民軍の創設85周年を迎え、27日の新月の日にアメリカが攻撃を仕掛けるという見方も伝えられており、まだまだ予断を許さない状況だ。

 仮にアメリカと北朝鮮が戦争状態になれば、北朝鮮との国境から約30kmしか離れていない韓国・ソウルが戦火にまみれることは必至だ。そうなれば、韓国から日本に逃げてくる難民が大量に発生する可能性もある。

 そして、そのような状況下では、韓国在住及び渡韓している日本人の安否も心配される。国家安全保障会議(NSC)によれば、その数は5万7000人。ゴールデンウィークになれば、さらに増えるはずだ。

 万が一の際、日本政府としては、民間機や民間船舶などとともに、自衛隊の航空機や艦船の派遣も検討したいとしているが、韓国政府は日本政府との協議に応じる姿勢を示していない。(4月21日付読売新聞)

 2015年10月、韓国政府の合意の上でそうした対応ができることが決定されたが、その実施には計画策定段階で暗雲が立ち込めている状況なのである。ここで、最悪の想定をすれば、いざとなったら韓国政府が日本人を事実上の人質にとって、日本からなんらかの支援を迫る可能性すら考えられるわけだ。日本は歴史に学ぶべきなのである。

韓国が勝手に竹島を取り込んだ李承晩ライン

 実際、韓国は過去に竹島を人質にするかたちで日本に巨額の支援金を支払わせた上に在日韓国人の権利を拡大するという蛮行に及んだことがある。これは、現在も在日韓国人をめぐる問題のベースとして存在しているわけだが、歴史に学ぶという意味で、今こそ「李承晩ライン」について、再び考える必要があるだろう。

 李承晩とは、韓国の初代大統領である。李は1952年1月、「マッカーサーライン」に代わるものとして、日本海や東シナ海に一方的に軍事境界線を設定した。

 マッカーサーラインとは、第二次世界大戦後に連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が定めた日本漁船の活動可能領域のことである。李は、このマッカーサーラインが廃止される直前に「海洋主権宣言」を行い、国際法に反するかたちで李承晩ラインを設定した。そして、そのライン内に勝手に竹島を取り込んだのだ。

 これは根拠のない行為であり、当然ながら問題が勃発する。53年7月には、韓国が竹島およびその周辺で漁業活動を行っていたことに対して、海上保安庁の巡視船が退去を要求したが、韓国の官憲によって銃撃されるという事件が発生した。54年8月にも、竹島近海を航行していた海上保安庁の巡視船が、同島に駐留していた韓国の沿岸警備隊から銃撃されている。

 ほかにも、「ラインを越えた」との理由で日本の民間漁船が拿捕され、乗組員が不当に抑留されるという事態が相次いだ。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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