安倍晋三首相にもっとも近い政治ジャーナリストといわれる、元TBSワシントン支局長の山口敬之氏が、ジャーナリスト活動を行う27歳の女性に対して性的暴行を行っていたとして、5月10日発売の「週刊新潮」(以下、新潮/新潮社)が被害者女性の告白を含む記事を掲載。山口氏には準強姦容疑で逮捕状まで発布されたが、菅義偉官房長官の秘書官も務めた中村格・警視庁刑事部長(当時)の意向で、逮捕執行が中止になっていたという内容は、大きな反響を呼んだ。
さらに、5月18日発売の新潮には、その続報として「『準強姦逮捕状』の『安倍総理』ベッタリ記者にアッキーが『いいね』した“女の敵”」と題した記事が掲載された。メディア関係者が語る。
「事前には、被害女性と山口氏のメールのやりとりを公開するとか、山口氏のTBS時代の女性不祥事を詳報するとか、さまざまな噂が飛び交っていましたが、実際の記事は、前週のスクープの余波を丁寧に拾った内容でした。読みどころは、逮捕状を握り潰したとされる中村格・刑事部長(当時)の近況と発言、山口氏が官邸関係者にSOSを送ったはずのメールが、なぜか新潮編集部に送られてきた、という2点でしょうか」
警視庁に近い関係者は、刑事部長の判断により逮捕の執行が中止になったという問題に対して、こう感想を漏らす。
「逮捕状を発布するのは裁判所です。山口氏のケースでは、高輪署の逮捕状請求に裁判官が問題ないと判断したにもかかわらず、刑事部長だった中村氏が横槍を入れたわけです。これは異例中の異例。トランプ米大統領によるFBIへの捜査妨害に等しいレベルで、高輪署などの現場サイドが怒り心頭だったとしても無理はありません。新潮は被害女性の告白を中心に記事を組み立てていますが、前回も今回も、ところどころに警察のリークを疑わせる記述があります。義憤にかられて取材協力した捜査関係者がいるのかもしれません」
ちなみに今回の記事でも、中村氏は新潮の取材に対し「署の捜査が杜撰」と、現場サイドの反感を買うようなことを口走っている。捜査関係者が新潮に協力しているとなると、自ら火に油を注いでいる格好だ。
TBS退社と暴行疑惑の関係
さらに、後段の「SOSメール問題」だが、新潮から取材を受けた山口氏が、相談のため官僚と思しき人物に送ったメールが新潮の記者に送られてしまったというもの。新潮は、この官僚を首相の懐刀とも評されてきた内閣情報官(新潮の記事では実名)と推測している。あらためて、山口氏と官邸サイドとの度が過ぎた“ベッタリぶり”が伝わってくる。
「言わずもがなですが、これでジャーナリストとしての山口氏のキャリアには大きな傷がついたし、彼を起用するテレビ局はなくなるかもしれませんが、問題はこれで終わらない可能性があります。新潮が『パンドラの箱』を開いた格好で、山口氏の女性問題に関して多くの情報が流布しています」(前出のメディア関係者)
例えば、山口氏がTBS局員時代に行ったとされる同局の女性プロデューサーとの不倫疑惑などは、すでに一部ネットメディアが報じ始めているし、そのほかにもTBS時代の乱脈な女性関係や性的言動に関して、具体的な事案が流れているようだ。また、山口氏の事務所家賃をめぐる官邸サイドとの“不適切な関係”を物語る疑惑もあり、これは新潮が取材しているともいわれる。
「新潮も書いていませんが、そもそもなぜ山口氏はTBSを退社したのか。2015年3月、ベトナム戦争時に韓国軍が慰安所を設置したことを明らかにした記事をライバル誌である『週刊文春』に寄稿したためだといわれてきましたが、これは口実です。文春に記事が掲載された1カ月後の4月に女性に被害を与え、同月中に高輪署が捜査を開始しました。そして逮捕状が発布されるまでの間、署はTBSに対しても極秘で捜査を行っています。その結果、山口氏の行状が局内上層部など、ごく限られた局員の間とはいえ大問題となり、実質的には退職に追い込まれたのです」(前出・警視庁に近い関係者)
痛手を受けたのは麻生副総理
一連の報道により、一線からは退くであろう山口氏。これは「ポスト安倍レース」に強い影響を及ぼすとの見方もある。山口氏失脚が最も痛手となったのは安倍首相ではなく、意外なことに麻生太郎副総理・財務相だという話があるのだ。政権にパイプを持つ関係者が打ち明ける。