北朝鮮を支えるロシア、金正男暗殺にも関与か
ロシアという強力なバックがいるとなると、「北朝鮮の孤立」は虚構なのか?
「テレビ局の記者に聞いたのですが、北朝鮮は経済制裁を受けているのに、平壌は想像以上に栄えていてびっくりしたそうです。これは、ロシアの援助によるものでしょう。14年から、北朝鮮ではロシアの通貨であるルーブルが使えるようになっています。
シベリアの小さな銀行に北朝鮮の口座がたくさん開かれており、そこにロシアやアジア諸国からのお金が、マカオを通じて流れ込んでいるのです。また、北朝鮮の労働者が3万人くらい極東ロシアに入っています。ロシア側は1日7000円くらいで雇っているのですが、彼らの受け取る日当は300~400円ほど。残りのお金は、北朝鮮が国家でピンハネしているのです。金正恩政権は、そういう手段でも懐を肥やしています。
5月から、ウラジオストクと羅津港の間で北朝鮮の貨客船・万景峰(マンギョンボン)号の定期運行が始まりました。これはまさに、影の存在だったロシアが表に出てきたということですよ」(同)
北朝鮮といえば、今年2月に金正恩の異母兄である金正男(キム・ジョンナム)がマレーシアで暗殺された。ロシアの関与はあったのだろうか?
「それはありますよ。金正男って、結局はアメリカとつながっていたわけですよね。北朝鮮の情報がアメリカに流れる可能性があるので、金正恩としては切りたい。その後ろ盾であるロシアが協力したことは想像に難くありません。そして、真犯人は絶対に捕まりません。内情を知る人物は、これまでもロシアによって消されています。
たとえば、ソ連国家保安委員会(KGB)やロシア連邦保安庁(FSB) の職員だったアレクサンドル・リトビネンコは、暗殺の命令を拒否して内部告発した挙げ句、06年に亡命先のイギリスで放射性物質を飲まされて毒殺されました。
15年には、プーチンに批判的だった野党指導者のボリス・ネムツォフが、クレムリン(旧ロシア帝国の宮殿)近くの橋で銃殺されました。警戒が厳しいクレムリンの近くでそんなことが起きるなんて、欧米や日本では考えられないでしょう。ロシアにとって、金正男の暗殺なんてお手の物ですよ。そして、真犯人が捕まることは絶対にありません」(同)
後編では、ロシアとアメリカのドナルド・トランプ政権との関係や第三次世界大戦の可能性について、引き続き中村氏の話をお伝えする。
(文=深笛義也/ライター)