文政権、実際には日本との友好関係を強化か
また、保坂氏は「文政権は、実際には日本との友好関係を強化する」という見方を示す。
「日韓合意に関しては、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官の交渉の中身などが問題になるでしょう。日韓合意は、一般的な国際合意と違ってサインをしたり判子を押したりということがなく、文書も公表されていません。ただ、全世界に放送されるテレビの前で合意の内容を発表した。そこには、合意の内容が書かれた紙があったと思うのです。
韓国の弁護士団体『民主社会のための弁護士会』の宋基昊(ソン・ギホ)弁護士が外交部を相手取った訴訟で、ソウル行政裁判所は文書を公開するように言いわたしています。それらの一連の動きは、韓国国内の問題を検証するという意味合いであり、決して反日ではありません。
文大統領は『日本とはシャトル外交をしたい』と、私にもはっきりとおっしゃっていました。今回、日本を訪れた特使の文喜相(ムン・ヒサン)国会議員も、その話をまず出しました。これは『日本といい関係を結びたい』という気持ちの表れであり、『日本との友好関係をしっかりと築きたい』という思いからです」(同)
文大統領は、アメリカが韓国に配備を進める高高度防衛ミサイルシステム(THAAD)についても、明確に反対の意思を示していた。すでに、一部でTHAADの導入が行われているが、今後はどのように対応するのだろうか。
「THAAD配備という非常に重要な問題が、朴さんが力を失ってレイムダック化しているときに、秘密裏に進められてしまった。そのため、国民からの反発が非常に強いのです。
THAAD配備に関する世論調査では、『賛成50%、反対50%』と出る場合もありますが、より細かい調査では『賛成30%、反対30%、わからない30%』で、いずれも拮抗しています。
THAADに反対する人たちは、『これは防御兵器ではない』と言います。湾岸戦争のときに、迎撃ミサイルということでパトリオットがサウジアラビアに配備されましたが、結局はアメリカがイラクに先制攻撃した後でイラクのスカッドミサイルを落とすためにパトリオットは使われました。『先制攻撃ありきで、それに対する反撃を防ぐのだから 、THAAD も単なる防御兵器ではない』という考えです。文大統領も、そういう視点でTHAADに反対してきました。
韓国の保守系の人たちは、『北朝鮮が先に攻めてくるからTHAADは必要なんだ』と言っていますが、反対派はその話をまったく信じていません。『北朝鮮は先に攻めてなんかこない』というわけです。仮に北朝鮮が韓国を先制攻撃すれば、その瞬間にアメリカが北朝鮮を潰してしまいますから。
また、北朝鮮が朝鮮半島の統一を望んでいるとしても、“廃墟”になった韓国をほしいわけではないですよね。“無傷”の韓国がほしいわけですから、先に核攻撃してくるということは、まずあり得ないと思います。
確かに、これまで北朝鮮との軍事境界線近くにある延坪(ヨンピョン)島が砲撃されたり、哨戒艦が魚雷で沈没させられたりしたことはありましたが、北朝鮮が全面戦争を仕掛けてくることはないでしょう。
北朝鮮が弾道ミサイルを撃ったり核実験を行ったりするのは、アメリカとの交渉を有利に進めたいからであって、戦争を起こすためではない。これは、韓国国内では多くの人が理解しています」(同)
『“独島・竹島”の日韓史』 日韓友好の長年の課題の一つとして避けて通ることのできない領土問題。日韓比較政治・比較文化研究家である著者が、19世紀中頃までの日韓の歴史を照らし合わせ韓国側の主張を提示する。