「これは、無知ゆえの発言ではないでしょうか。韓国とアメリカの間で結ばれている『在韓米軍地位協定』のなかで、『韓国は敷地を提供し、アメリカは武器を提供する』と明記されています。つまり、THAADに関しても『費用はアメリカが持ち、韓国は敷地を提供する』というのは、最初から決まっていたことなのです。
THAAD配備を強行した場合、中国の反発を免れることはできません。そうなると、トランプが習近平国家主席に対して言っている『あなたたちが責任を持って北朝鮮問題を解決してほしい』という主張と矛盾します。中国が裏でアメリカに『THAAD配備を止めてくれ』と言っている可能性もありますが、それを無視して強行するというのは、外交的にはあり得ない選択です。そういう意味でも、韓国はTHAAD配備について検討し直す必要があるのではないでしょうか」(同)
韓国人は朴槿恵を見て「ニセ保守」に気づいた
今回の政権交代は、保守から革新へという流れも生んだ。李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵と2代続いた保守政権から革新系の文政権に移行したことについて、韓国国民はどう受け止めているのだろうか?
「安さんの『国民の党』も中道左派なので、有権者の70%以上は革新系に投票したことになります。韓国国民は、朴政権を見ていて『不正を行ってでも既存の権力と財力を守るだけの人たちが保守であって、それは韓国を亡国に導くニセ保守なんだ』ということを見抜いてしまったのです。
たとえば、2014年に発生したセウォル号の転覆事故。沈んでから3年もたって、やっと引き上げられました。3年前に引き上げることができたのに、なぜやらなかったのか。当時の朴政権にとって、大きな打撃になるからです。そして、残された9体の遺体のうち、引き上げてみたら遺体として形が残っていたのは2体くらいで、あとの方々は骨までバラバラになってしまっていました。3年間も海の中に放っておいたわけですから、形が残っているはずはありませんでした。
国民は怒り心頭です。『そういう非人道的なことをやるのがニセ保守である』と目の前に突きつけられたわけですから。酒の席では、そういう話をしたら止まりませんよ。前の選挙で朴さんに投票した人の中には、『今回は文在寅に投票した』という人も多くいます。だから、『保守から革新に変わった』というより、旧来の保守が没落したのです。
日本では『アカ』という言葉は使われなくなりましたが、韓国では最近まで左翼のことを『アカ』と呼んでいました。アメリカのバラク・オバマ前大統領なども、もし韓国で政治をやれば『アカ』と呼ばれることでしょう。文大統領も心ないニセ保守から『アカ』と悪口を言われていたのですが、演説や他候補との討論を聞いて『この人は保守的な価値観を持っているじゃないか』と感じる人が増えたのです」(同)
保坂氏は、文大統領のある発言がポイントになったと指摘する。
『“独島・竹島”の日韓史』 日韓友好の長年の課題の一つとして避けて通ることのできない領土問題。日韓比較政治・比較文化研究家である著者が、19世紀中頃までの日韓の歴史を照らし合わせ韓国側の主張を提示する。