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殺害方法については、「Tシャツにプリントする工場を経営していた頃、出入り業者が失敗した印刷を消すため持ってきた毒物を保管していた」「健康食品のカプセルに入れて飲ませた」と話した。殺害の目的が金であることも隠さない。否認、黙秘作戦の弁護団は大慌て。
「ここで初めて聞いたこともあるので協議させてください」と弁護団は裁判長に申し出、了承された。千佐子被告は弁護人が「勇夫さんがなくなったら、財産はどうなると?」と聞くと、「それは愚問。奥さんがもらえる。先生の奥さんもそう思てはります」とも語った。
2日間の被告人質問でも、裁判官の質問に「私が殺(あや)めました」と明言した。入退廷時には丁寧に一礼していた彼女は、「死刑になってもいい」とも語った。検察側の主張が通れば死刑の公算も高い。覚悟の上なのか。後日、主任弁護人は、起訴事実を認めたことについて「想定外ではない」と話した。
女性に偏る裁判員裁判
11月の判決までの審理期間135日は、裁判員裁判で2番目の長さ。裁判員候補の多くが辞退した。仕事を持つ人は難しく、6人の裁判員のうち男は1人。裁判官3人も、中川綾子裁判長と右陪席が女性。全体で9人中7人が女性のかたちで裁くが、性別が偏りすぎだ。
精神鑑定では「軽度のアルツハイマー」とされた精神鑑定の要約が法廷の画面に示された。口元に手をやり「脳がやや委縮した」という自分の写真を見つめる千佐子被告は、どんな心境なのだろう。証人となった医師は弁護人の質問に「鑑定書に書いています」と答える。これが繰り返されると中川裁判長が「裁判官や裁判員は鑑定書を見ていませんので」と言い、医師は検察官に渡された鑑定書を読み上げた。
従来の裁判ならこの時点で裁判官が分厚い鑑定書を読んでいないことはあり得ないが、裁判員裁判は裁判員と裁判官が異なる材料を持てない。プロが素人に合わせる裁判に危機を感じる。検察、弁護側は真っ向対立だが、7月18日に中間論告と弁論がなされ、勇夫さん不審死の審理は結審した。
(文=粟野仁雄/ジャーナリスト)
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