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中国共産党機関紙「人民日報」など中国メディアも、習氏の祝電についてはまったく報道していない。北京の外交筋は「中国メディアは習氏が外国指導者に祝電を送ると必ず報道しており、今回の場合、北朝鮮に祝電を送らなかったということだろう」と語っている。習氏は15年まで、北朝鮮の建国記念日や労働党創立記念日(10月10日)、さらに金氏の誕生日にも祝電を送ってきたのだが、昨年から2年連続で建国記念日の祝電を送っていないとみられる。それだけ、両者の関係は冷え切っているのだ。
それにもかかわらず、なぜ中国は国連安保理の制裁内容を大幅に緩和するような真似をするのか。それは、中国側の勝手な都合による。米国が武力行使すれば、多くの難民が鴨緑江を越えて、中国領に殺到する。また朝鮮半島で有事が発生すれば、中国経済に及ぼす影響も大きい。
それに、中国共産党は10月18日に5年に1回の第19回全国代表大会を開催すると発表しており、習氏は党大会で自身の腹心を多数、最高指導部に送りこみ、権力基盤の強化を目指している。だが、朝鮮半島で有事が発生すれば、国内情勢どころではない。党大会を延期してでも、朝鮮半島情勢の鎮静化に力を注がなければならない。これまでの政治改革や権力掌握は風前の灯火であり、大きな影響が出ることが予想される。
それだけに、習氏としては、なんとしても金氏の暴走を止めなけれればならないが、中朝関係は冷却化しているだけに、北朝鮮情勢が流動化すればするほど、習氏は政治的に追い込まれることになる。
だから、習氏は絶対に北朝鮮を経済的に追い詰めたくないのだ。仮に追い詰めれば「窮鼠猫を噛む」で、若くて血気盛んであり、世間知らずの金氏が韓国に武力侵攻したり、在日米軍基地やグアム島の米軍基地をミサイル攻撃するなど自暴自棄な行動に出かねないからだ。
つまり、習氏の行動はすべて“自分かわいさ”ゆえであり、基本的には金氏の思考方法とまったく変わらないのである。それは習氏、金氏のほかにも、もうひとり、ドナルド・トランプも同様といえるのかもしれない。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)
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