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北朝鮮と米国、お互いに軍事攻撃できない可能性

構成=長井雄一朗/ライター
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中国人バイヤーが北朝鮮で海産物を裏取引

――カギを握る中国ですが、相変わらず北朝鮮を支援しているともいわれています。

 中国も決して一枚岩ではありません。仮に中央政府が「支援をストップせよ」と遼寧省や吉林省などの幹部に命じても、簡単にはやめられない事情があります。実は、東北三省(遼寧省、吉林省、黒竜江省)には支援だけではなく北朝鮮でビジネスを行っている幹部がかなり多いのです。

 また、地方政府は中央政府に対して、それなりの反抗心もある。地方政府の言い分は「何を言っているんだ。ビジネスをやって儲けていて何が悪い」というものです。

 実際、中国特に東北三省には朝鮮人のビジネスパーソンが多く、中国人と取引をしています。たとえば、北朝鮮の海産物は汚染のないイメージがあるため、中国人に大変好まれます。そこで、中国人のバイヤーが多額の現金を持って北朝鮮に行き、海産物を仕入れるのです。これは現金取引であり、決して表に出ないお金です。また、北朝鮮の漁船が水揚げした海産物をロシアに売るケースもあります。その後、出荷される際には北朝鮮産からロシア産に化けます。

 北朝鮮も韓国も、食べる海産物はイカ、スルメ、スケトウダラ、メンタイコなど同じです。そのため、韓国で販売しているロシア産の海産物が実は北朝鮮産だったという可能性もあるのです。

 ほかにも、北朝鮮とのつながりが深い中国の吉林省延辺朝鮮族自治州の延吉市では、市場で北朝鮮の海産物が多く販売されています。吉林省は海に接していないため、海産物は北朝鮮に頼っているのです。ちなみに、中国とロシアとの国境に近い北朝鮮の羅先特別市には中国人のバイヤーが多く入り込んでいます。そこから、海産物や鉱物などが中国に入り込んでいるのでしょう。

 ただ、これは中国朝鮮族(中国在住の朝鮮民族)の方から聞いたのですが、北朝鮮とのビジネスはハイリスク・ハイリターンだそうです。表の支援およびビジネスの取り締まり強化も重要ですが、裏のビジネスの取り締まりも必要です。しかし、さまざまな利権もからんでおり、現実的にはどこまで取り締まることができるかはわかりません。

 問題の本質は、そこにあります。中国には中国共産党の幹部をはじめ、北朝鮮とのビジネスで儲けている人物や企業が多く、ウィンウィンの関係を築いているのです。つまり、「北朝鮮が潰れては困る」という勢力が中国には多い。中央政府の威令が東北三省に届かない理由もそこにあるのです。

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