ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 老後の貯蓄、3000万円ないと破綻?
NEW
荻原博子「家庭のお金のホントとウソ」

「老後の貯蓄3000万円ないと破綻」のまやかし…投資に走って資産を失う人の共通点

文=荻原博子/経済ジャーナリスト
【この記事のキーワード】, , , ,
「老後の貯蓄3000万円ないと破綻」のまやかし…投資に走って資産を失う人の共通点の画像1「Thinkstock」より

老後資金は、いくら必要?」という話の際に、驚くような金額を言われた覚えはありませんか?

 保険会社の無料相談などを受けると、見せられるのが生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」というアンケートです。同調査の平成28年度の数字を見ると、老後の「最低日常生活費」は月平均22万円、「ゆとりある老後生活費」が月平均34.9万円となっています。60歳から85歳までの25年間で見ると、以下のような金額が必要ということになります。

「最低日常生活費」……22万円×25年×12カ月=6600万円
「ゆとりある老後生活費」……34.9万円×25年×12カ月=1億470万円

 多くの人は、「最低日常生活」では困るし、「ゆとりある老後生活」といってもぜいたくは望まない、という感じでしょう。そのため、間をとって「月30万円」で計算すると、必要なのは以下の金額です。

30万円×25年×12カ月=9000万円

 しかも、これは生活費だけで、介護や病気への備えは入っていません。それらを加えると、「やはり1億円は必要」と言われます。

 一方、老後の収入については公的年金があります。厚生労働省が発表している平成29年度の老齢厚生年金のモデルケースは月22万1277円。25年間でもらえる年金は6638万3100円(目減りの可能性あり)となります。老後に1億円必要だとすると、残りの約3500万円は自助努力で用意しなくてはならないということになります。

 もうひとつ、よく用いられる老後資金の計算方法があります。総務省の家計調査を使うもので、こちらのほうが説得力があるかもしれません。

「老後の貯蓄3000万円ないと破綻」のまやかし…投資に走って資産を失う人の共通点の画像2総務省「家計調査報告(家計収支編)平成28年(2016年)」より

 この場合は不足分が月5万4711円のため、以下のような計算になります。

5万4711円×25年×12カ月=1641万3300円

 老後25年間で1600万円以上の生活費が不足することになります。さらに、介護や病気になったときの費用を含めると、やはり「3000万~3500万円は自前で用意することが必要」と言われます。

「老後資金が不足する」は本当?

 会社員の退職金は、中小企業で1000万円、大企業で2000万円ほどといわれています。「不足分の3000万~3500万円が必要」ということは、退職金のほかに1500万~2500万円を老後までに用意しなくてはならないということです。

「住宅ローンと子どもの教育資金を払ったら、いくらも残らない」という人にとって、これは絶望的な数字です。そして、その絶望を見透かすように、金融機関から「豊かな老後を迎えるためには、今のうちにしっかりお金を運用して増やしておかなくては」などと言われ、「そうかな」と思ってしまいます。

 しかし、これはカモがネギ背負って鍋に飛び込むようなもの。そのままでは、金融機関の言うがままに投資に追い込まれていきます。なぜ、金融機関のカモになってしまうのか。それは、前述した2つの計算方法で出てきた数字は、実は「あなたにとってリアルに必要な老後資金」ではないからです。

荻原博子/経済ジャーナリスト

荻原博子/経済ジャーナリスト

大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

『生き返るマンション、死ぬマンション』 年々ローンはきつくなるのに、資産価値はどんどん落ちてゆく――マンション大崩壊の時代に、我々庶民に打つ手はないのか? そんな悩みに「庶民の味方」が日本各地を徹底取材。あなたのマンションを「お宝」に変える方法を具体的に紹介! amazon_associate_logo.jpg

「老後の貯蓄3000万円ないと破綻」のまやかし…投資に走って資産を失う人の共通点のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!