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小笠原泰「日本は大丈夫か」(番外編)

希望の党に政権交代した際の想定シナリオ…安倍政権との違いは生まれない可能性

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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 大衆政治においては、トランプ米大統領も示すように、メッセージは単純明快でないといけない。そのメッセージは、自民党ではない新しい保守政党という選択肢を有権者に提示するということである。内実がごった煮であっても、重要なのは単純明快なイメージである。民進党との統合は、この意味で小池氏の選択肢ではないはずである。

財政状況は悪化し続ける

 そもそも今回の解散総選挙は、自民党が議席減を最小限に抑えようという戦略的解散であり、争点などはない。安倍首相は北朝鮮の危機を煽り、それを利用して祖父・岸信介の遺言である憲法9条改正を訴えるであろうが、小池氏も右派で強硬な憲法改正論者なので、憲法改正自体は大きな議論にはなるまい。安倍首相が北朝鮮危機をこれ以上煽ると、9条改正に北朝鮮危機を利用していることが明白になるので、安倍首相もこの議論を控える可能性がある。

 それを知っている小池氏は、争点を消費税に持っていくのではないか。安倍首相は「高齢者に手厚い」というアピールだけではまずいので、消費増税分を若者の教育や育児などに当てるという人気取りのばら撒き政策を出したが、小池氏は消費増税の凍結を主張している。増税嫌いの多数の有権者への明確な受け狙いである。

 現在の日本の巨額な財政赤字、社会保障費増大によるプライマリーバランス(基礎的財政収支)均衡のメドの立たなさ、そして財源の乏しさを真剣に考えれば、増税なくして社会保障の充実や維持は難しいのが現状である。しかし、この当たり前の現実を、どの政党も有権者に明確に言わない。あたかも、消費税率を上げなくても社会保障は維持できるかのような口ぶりである。どの政党も「景気回復が先」と言い、結果、消費税率は上げられず、財政状況は悪化し続けるという繰り返しである。この背後には、おそらく国民に納税者としての意識がなく、国家を運営する原資は納税者のお金というオーナーシップの意識がないことと、政治家も納税者のお金ではなく、自分が使える国家のお金と思っていることがあるのかもしれない。

 安倍首相、小池氏のどちらが勝つかで、消費増税分をばら撒くか、消費増税を延期するかで違いがあるように見えるが、消費増税分をばら撒いて国家の財政赤字の補填に充てない安倍首相の公約では、国家財政の赤字状況はやはり悪化する。消費増税をしなければ、財政赤字は当然悪化する。どちらにしても将来世代の借金が雪だるま式に増えるだけである。

シルバー民主主義の代償

 選挙は勝ってなんぼということで、将来のことは考えないのである。いや、日本の将来を考えたら、選挙には勝てないというべきであろう。政治家に言わせれば、選挙に勝たなければ何もできない。当選後に改革に着手すると言うが、フランスの大統領選と国民議会選挙を席巻したマクロン大統領が直面しているように、国家財政を維持し、国の競争力をあげるために国民に負の分配を行う政策を打ち出すと、支持率はいっきに下がるのである。

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