『ネットと愛国』(講談社)の著者でジャーナリストの安田浩一氏も、この抗議活動に駆けつけており、以下のように語った。
「多様性とは、すべての人の生きる権利と尊厳を認めること、存在を認めることから始まる。地域に住む人々を守るため、日本社会の寛容と多様性を守るため、小池氏が自ら口にした『寛容』と『多様性』という言葉を突き返そう」
政治には、日本人だけではなく外国人も含めた包容の精神が必要である。「小池氏には、それが欠けているのではないか」という思いを抱く有権者が増えたのか、希望の党の支持率は下がっている。
小池氏はかつてヘイトスピーチや排外主義的な主張を持つ団体および活動家とのつながりもあったが、今はその痕跡をホームページなどから削除している。小池氏の笑顔の裏に、歴史と向き合う精神があるのか。また、ヘイトスピーチなどについて、どう考えているのか。在日コリアンをはじめとする外国人は、そうした点を不安視しているのが実情だ。
在日コリアン「希望が絶望」
この抗議活動には、在日特権を許さない市民の会(在特会)東京支部もカウンターデモに訪れていた。主催者は、同会東京支部長の新妻舞美氏だ。通称「梅乃結(おにぎり)さん」と呼ばれており、排外主義団体の界隈では有名な人物である。
新妻氏の演説は、ときに激しい言葉が使われたが、透き通る声でよく響いた。在特会のデモには、警備目的の警察庁だけでなく情報収集のために公安も張り付く。排外主義団体は公安の調査対象になっており、公安は静かに演説の内容や顔写真を記録しているのだ。
公安は「誰がデモに参加したか」「誰がどのような発言をしたか」を淡々と記録し、それを報告書にまとめる。そして、毎年「内外情勢の回顧と展望」を作成しているが、今やこうした排外主義団体の活動は必ず掲載されている。
在特会のデモ活動の最盛期は、2013年頃に東京・新大久保でデモを行っていたあたりだろう。しかし、今は一時期のような勢いはない。当時の会長だった桜井誠氏が在特会から手を引き、日本第一党という政党を立ち上げ、現在はそちらの活動にシフトしているからだ。
今回のカウンターデモを見ても、かつては大多数を動員していた在特会からは6人程度であった。ただ、意外なことに新妻氏は小池氏には批判的な立場のようだ。在日コリアン側が「希望が絶望」とリズムコールを行った際、「あ、それ賛成」と同調していた。
朴氏は、抗議活動のなかで「我々はヘイトに屈しません。ともに日本社会と歩んでいきます。その覚悟をここに表明します」と叫んだ。ヘイトと憎悪からは、何も生まれない。この朴氏の決意表明が、排外主義団体だけではなく多くの日本人にも伝わってほしいと切に願う。
(文=長井雄一朗/ライター)