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片田珠美「精神科女医のたわごと」

【座間9人遺体】白石容疑者、遺体切断で強烈な「自尊欲求」を満たす

文=片田珠美/精神科医

 ちょうどその頃から精神的に不安定な様子がうかがえるようになり、周囲に「死にたい」「生きていても意味がない」などと漏らすようになったようだ。しかも、実際に飛び降り自殺をしようとしたこともあったらしいので、執行猶予が付いたとはいえ、有罪判決が確定したことを“破滅的な喪失”と受け止め、自暴自棄になった可能性が高い。

 もっとも、有罪判決は、売春をさせていると知りながら風俗店に女性を紹介した結果であり、自業自得ともいえる。また、ツイッターに「色々な人を裏切ってます」「裏でいろいろやってます」などと白石容疑者の悪評が投稿されており、「人の個人情報とか話す悪徳スカウトだった」という証言もある。したがって、反社会的行為を繰り返してきたことがうかがえる。

 反社会的行為を繰り返すのも、強い自尊欲求のせいであることが多い。白石容疑者が強い自尊欲求を抱くようになったのはなぜなのかを分析するためにも、生育歴や家庭環境、教育環境や職場環境などの詳細な解明を切に望む。
(文=片田珠美/精神科医)

【参考文献】
コリン ウィルソン、ドナルド シーマン『連続殺人の心理』<上下>中村保男訳、河出文庫、1993年

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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