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当落の差は63票…小金井市議選の開票、なぜ翌朝4時過ぎまで当落が判明しなかったのか

文=菅谷仁/編集部
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「getty images」より

 21日に投開票された千葉県知事選。投票終了直後の午後8時過ぎ、前千葉市長の熊谷俊人氏(無所属新人)の当選確実が各メディアで速報され、全国的な注目を集めた。ちょうどそのころ、同日投開票された東京都小金井市議会議員議選では、後に延々と続くことになる開票作業が始まっていた。開票作業は延々7時間半に及び、候補者の当落が完全に判明したのは22日午前4時27分だった。いったい何があったのか。

 朝日新聞デジタルは22日、その現場に居合わせた記者のルポ『遅れに遅れた開票、記者も次々と…小金井市議選、外は朝』を公開。悶々とする陣営関係者や記者の姿を以下のように伝えている。

「開票発表が遅れるにつれて、取材に当たっていた記者も1人去り、2人去り――。会場で開票作業を見守っている人たちも、当選者が読み上げられた午前4時45分ごろには数人まで減っていた。新聞紙をかぶって、床に横たわる人もいた」

「体育館で開票作業を見守っていた男性会社員(47)は22日午前1時すぎ、『明日の仕事もあるから引き上げます』と言って、ため息をついて会場を後にした。毎回開票所には来るが、結果を見ずに立ち去るのは初めてという。別の男性は、舌打ちをしながら開票作業を見守っていた。『立会人を減らせばいいのに』」

当落63票差の接戦、小数点以下の案分票も

 小金井市選挙管理委員会の発表によると、定数24議席の同市議選には36人が立候補。投票者数は4万606人で投票率は40.18%だった。公表資料を見る限り、小数点以下の案分票の存在が多数あったようだ。

 最大得票者は渡辺大三氏(情報公開こがねい)で3292.710票、最小は池田孝之氏(無所属)の37票。主だった政党候補者では、日本維新の会の元職、ももせ和弘氏が722票、自民党の新人、鈴木正和氏が620.321票を獲得したものの落選した。

 事実上の当落ラインである最小得票当選者は村山ひでき氏(みらいの小金井)で916票。一方、最大得票落選者は篠原ひろし氏(改革連合)の853.434票で、その差は約63票だった。自民党都政関係者は次のように説明する。

「地方議会選挙こそ1票の重みを実感することはありません。多くの自治体で僅差、接戦で当落が分かれます。また、投票用紙に記入されている候補者の氏名が正確に記載されていなくて、複数の候補者の名前にも読めるような案分票が多数見つかった場合は、開票作業が長引くこともしばしばです。

 今回の小金井市議選も『渡辺』『鈴木』『ひろし』などという、姓もしくは名前のみしか判別できない投票用紙が複数あったと聞いています。地域柄が反映される地方議会選挙では同じ姓の候補者が重複しがちです。また最近は、候補者名を平仮名表記にする候補者も多く、名前だけでは区別がつかないことも多いのではないでしょうか」

 前出の朝日新聞の記事によると小金井市の開票方式は前回実施時と変化はないという。そのうえで、今回の開票作業の遅れを次のように分析する。

「今回、発表が滞り、確定が遅れたことについて、市選挙管理委員会の畑野伸二事務局長は、『思っていたよりも立会人の方に熱心に、丁寧に見ていただいた。丁寧に見るのは必要だが、早く結果も出さないといけない。どういうところでバランスをとるか、他市のやり方を確認したい』と話す。

 今回の立会人は、各陣営からくじで選ばれた10人だった。小金井市の場合、市議選以外の選挙では、立会人席の前に候補者別の有効票500票ずつを束ねて置く積載台を設け、立会人がいつでも自由に点検できる『随時点検方式』を採る。だが、市議選では、立会人全員が点検・押印してから積載台に載せる『回示点検方式』を採用しており、10人が一人一人チェックしてから印鑑を押していたため、時間がかかったとしている」

立会人が1票ずつチェックすると開票事務は止まる

 東京都選挙管理委員会事務局によると、都内の首長選や議員選挙での立会人点検作業の方式は、各開票管理者の裁量に委ねられているという。小金井市の周辺自治体に聞いたところ、武蔵野、国分寺両市議選は「随時点検方式」、府中市議選は「回示点検方式」を採用しているという。府中市選挙管理委員会事務局の担当者は次のように話す。

「当市の選挙では、立会人の方に積載台の有効票の束をいつでも自由に確認できるようなシステムにしています。立会人の皆様には最終的にその束を点検・押印していただくことになっていますが、そこで今回の小金井市さんの事例のように束を1票1票確認されると開票作業は止まってしまうでしょう」

 都民ファーストの会関係者は語る。

「もしもの場合もあるので、軽々に『立会人の数を減らせ』とか『もっと点検作業を簡略化しろ』と訴えるのはどうかと思います。とはいえ、どこかの陣営関係者が懐疑的になりすぎて、イチから束をすべてを数えなおすというのも……。つまるところは開票作業を行っている自治体職員との信頼関係の問題です。物議を醸した昨年のアメリカ大統領選のような郵便投票でもないわけですから。

 地方選挙では10数年前までは自治体職員が絡む不正が発覚することもありました。しかし、機械化や職員による多重チェック体制が導入されたこともあり21世紀に入ってからは『開票所の立会人の点検で不正が発覚』という事例はあまり聞いたことがありません。案分票を不正に扱って当落が分かれるなんてことがあったら、それこそ大ニュースでしょうしね。

 予算削減で自治体職員の人員も減っています。そのうえでの深夜の長時間労働は間接的に住民サービスにも影響する話ですから、立会人を含め、票のチェック作業と開票作業の効率化・スピードアップは時代の要請だと思います」

 どんな仕事にも言えることだが、開票作業も“正確かつスピーディー”が一番のようだ。

(文=菅谷仁/編集部)

菅谷仁/Business Journal編集部

菅谷仁/Business Journal編集部

 神奈川新聞記者、創出版月刊『創』編集部員、河北新報福島総局・本社報道部東日本大震災取材班記者を経て2019年から現職。

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