さらに、米国内では要人による米朝開戦を想定した発言が飛び交っている。米議会共和党の重鎮、グラム上院議員は12月3日、CBSテレビの報道番組に出演し、北朝鮮による新型ICBMの発射を受けて米朝の「軍事衝突が近づいている」との認識を明らかにし、国防総省は在韓米軍将兵の家族らを韓国から退避させるべきだと述べた。
マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は2日、西部カリフォルニア州での安全保障関連の会合で北朝鮮問題を早く解決しなければ「武力衝突に近づいていく。残された時間は少ない」と指摘。さらに、3日のFOXニュースの報道番組で「トランプ大統領は単独で(北朝鮮問題に)対処する用意がある」と対北先制攻撃の可能性を示唆している。
中国も「戦争は不可避」
これまで、対話を主張してきた中国も、米朝開戦は不可避との見方に転じつつあるようだ。中国共産党の7人の最高指導者の1人、汪洋・党政治局常務委員(副首相)は12月1日、訪中した山口那津男公明党代表と会談し、核・ミサイル開発を進める北朝鮮について「中国と北朝鮮の間には血で固めた関係があったが、今は核問題のために対立している」と語っている。中国の最高指導者の口から、「中朝対立」の事実が明らかにされたのは初めてだけに、中国はすでに北朝鮮を見放しているともとれる。
これは11月17日、習氏の特使として宋濤涛・党中央対外連絡部長(閣僚級)が訪朝したにもかかわらず、金正恩朝鮮労働党委員長との会談を拒否されたためで、中国指導内には金氏の説得は無理で、最終的にトランプ氏が対北攻撃の決断を下すことになると判断しているようだ。
これを裏付けるように、中国共産党機関紙「人民日報」傘下の国際問題専門紙「環球時報」(12月1日付)は社説で、「朝鮮半島において、最終的に戦争が爆発する可能性が増加している」と指摘している。同紙は党内の意見を代弁する報道機関だけに、党指導部では「戦争は不可避」との見方が支配的になりつつあることを裏付けている。
その一方で、北朝鮮はというと、北朝鮮外務省報道官は12月6日、米国と韓国による大規模な合同軍事演習や、先制攻撃をほのめかす米当局者らの発言を受けて、「残る問題は、いつ戦争が起きるかだ」と主張。
戦争を望んではいないがそこから逃げるつもりもないと述べたうえで、「米国がわれわれの忍耐力について見込み違いをし、核戦争の導火線に火をつければ、われわれの強力な核能力によって米国は高い代価を払うことになる」と威嚇するなど、相変わらず強気の姿勢を崩しておらず、ボルトン氏が言うように「3カ月以内」での開戦は避けられないと判断しても不思議ではないようだ。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)