辞職勧告決議案で「反省や謝罪の弁も聞かれず、自身の責任の取り方も示していない」とされた小泉氏は、再選挙への出馬に意欲を見せているが、関係者の間では「再出馬せず、誰かの支援に回る」という見方も出ている。
「それはわかりません。というのも、今のところ自民党の長老が再選挙で彼をどうするのか、決めていないからです。『小泉氏は3位の田中甲氏を支援するのでは』とも言われていますが、今は憶測の域を出ません」(同)
ちなみに、市長選には約1億円の税金が投入され、再選挙には再び約1億円のコストがかかる。しかし、再選挙でもまた全候補が法定得票を得られなかった場合は再々選挙となる。つまり、誰かが有効投票総数の25%を得るまでは続くことになり、そうなると「1億円の税金の無駄遣い」も続くことになってしまう。
再々選挙としないためにも、誰かが身を引くのはひとつの方法かもしれない。 ちなみに、過去に行われた地方選挙における再選挙では、最下位だった候補者は再選挙に出馬しないケースが多く、再々選挙にはなっていない。
「親が市長、子が市議」となる可能性も
再選挙で小泉氏が支援するなら有利となる田中甲氏だが、息子である田中幸太郎氏は現職の市川市議であり、田中甲氏が当選すると「親が市長、子が市議」という関係になる。
「議会には、首長が正しい市政を行っているかをチェックする役割もあります。今回、大久保市長が市長選に立候補せず、息子が補選で当選して市議となりましたが、これは親が出馬しなかったので良しとしましょう。しかし、田中氏が当選した場合、息子は県議会などに転身するのが望ましいと思います」(同)
年度ごとの財政収入が財政支出を上回り、地方交付税を受け取らずに済む「優秀な財政都市」の市川市だが、議会に目をやれば、切手問題が起こったり若い市議が児童買春で逮捕されたりするなど、ここのところ問題続きだ。
「水清ければ魚棲まず」と言われるが、ある市川市民はこう言う。
「政治家に100%のクリーンさを求めるつもりなど、毛頭ない。国家や市政を良き方向に導くのが政治家としての器であり、それができれば、汚職や口利きなど気にしないよ。何より、選挙の結果として表れるでしょう」
かつて、元首相の田中角栄はロッキード事件で逮捕されながらも、国家のために働いた実績が認められ、その後の衆議院議員選挙でトップ当選を果たした。汚職というマイナスの何倍も、国家や地方のために働いたことがプラスとして評価されたわけだが、そんな田中角栄とは比べものにならぬほど小粒なのが、昨今の政治家である。
そもそも、今回の市長選の投票率は30%しかなかった。多くの“千葉都民”が無関心であった結果だが、やはり有権者は政治家の器や行動、政策実行力に目を光らせる必要がある。それを怠れば、仮に市政を良き方向に導けぬ人物が市長に当選してしまったとしても、文句を言えないだろう。
再々選挙とならぬよう、再選挙では多少のことに目をつむってでも“器の大きな候補者”を見抜いて票を投じたい。「そんな候補者いるの?」などと言わずに。
(文=後藤豊/ライター、市川市民)