音楽教室からの著作権料徴収には難色
一連のJASRACの著作権騒動について聞くと、最初に意外な答えが返ってきた。
「僕は職業作家だからね。著作権で守ってもらえないと大変だよね」(同)
自らを「職業作家」と称するところが鈴木氏ならではのウィットに富んだユーモアだと感じた。鈴木氏の作品を思い浮かべると時代を引っ張った名曲ばかりであり、決して職業作家ではなくアーティストだと確信するのは筆者だけではないだろう。とはいえ、作曲家としての立場で言えば「著作権によって守られるべき」というのは当然の意見だ。
また、鈴木氏が日本の著作権に対する認識の甘さも指摘した。
「いま日本でいう著作権はアメリカに倣ったものだから、日本にとって合わない部分もあると思う。日本では著作権の整備は遅れていて、認識され始めたのはこの30~40年くらいじゃないかな。かつて、著作権なんかお構いなしにバンバン使っていたから大変。戦後にアメリカの曲をレコードやラジオで使用していたことについて、アメリカ側から著作権料を求める動きが起きて争ったりしているけれど、そんなのはバカげていると思う」(同)
音楽教室等の著作権のあり方についても、独自の見解を示す。
「音楽教室で子どもが聞いて音楽を知っていくことは大切だし、作曲家にとってもつくった曲を多くの人が聞いてくれるのはありがたいこと。著作権料といってもひとまとめにせず、分けるべきなんじゃないかな。子どもの教育に使用する場合ならもう少しフレキシブルでもいいのではないかと思う」(同)
音楽教室への著作権料の徴収が先送りになったことで、まだまだ論争は激しくなりそうだが、当面は音楽を学ぶ子供たちへの影響は避けられそうだ。個人のSNSや動画サイトへの投稿も盛んな昨今である。著作権についての再認識が必要なのかもしれない。
18年2月には、鈴木氏による小林旭の新曲が発売される予定だ。19年には、平成から新しい時代となる。時代を紡ぐ鈴木氏の名曲を聞くのが楽しみである。
(文=道明寺美清/ライター)