韓国政府が従軍慰安婦問題における「日韓合意」について新方針を発表したが、それは日本にとって到底受け入れられない内容である。
懸念されていた再交渉こそ明言されなかったが、日本側に元慰安婦への自発的な謝罪などを促し、日本が元慰安婦支援の財団に拠出した10億円についても「韓国側が充当する」という意図の見えづらい方針が発表された。
2015年12月の日韓外相会談で日韓合意は締結された。しかし、それから2年後の17年12月、韓国外務省直属の作業部会が検証報告書を発表し、「(当時の)朴槿恵大統領と交渉責任者、外務省の間の意思疎通が足りなかった」「朴大統領は(対日政策で)立場を旋回させて政策的混乱を招いた」などと指摘した。また、文在寅大統領も「この合意では慰安婦問題は解決されない」と反故にする姿勢を見せた。
しかし、一貫しているのは「日本はすでに契約を履行しており、あとは韓国国内の内政の問題である」ということだ。そのため、日本は大使館を通じて「受け入れられない」と韓国に抗議している。
50年以上前に「完全に解決済み」の慰安婦問題
ここで、日韓合意の締結時を振り返ってみよう。
まず、安倍晋三首相は「日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒やしがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からお詫びと反省の気持ちを表明」した。その上で、以下のように述べている。
「慰安婦問題を含め、日韓間の財産・請求権の問題は1965年の日韓請求権・経済協力協定で『最終的かつ完全に解決済み』との我が国の立場に変わりないが、今回の合意により、慰安婦問題が『最終的かつ不可逆的に解決』されることを歓迎」
一方、朴大統領も「今次外相会談によって慰安婦問題に関し最終合意がなされたことを評価」とした上で、「新しい韓日関係を築くために互いに努力していきたい」としている。また、韓国は「今後、国連など国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える」と表明した。
ポイントになるのは、「1965年の日韓請求権・経済協力協定で最終的かつ完全に解決済み」と「最終的かつ不可逆的に解決」という言葉である。そもそも、50年以上前に締結された同協定において、慰安婦問題は両国間で解決しているのだ。しかし、その後も何度も韓国側が蒸し返してきたため、第三者のアメリカを仲介役として日韓合意が成立したという経緯がある
そして、日本は元慰安婦支援のために韓国が設立した「和解・癒やし財団」に10億円を拠出しており、すでに契約を履行している。同財団は韓国のものであるため、あとは日本が関知する必要はなく、「韓国側が元慰安婦支援のために何ができるか」という問題になる。
日本は韓国の要求に応じる必要はない
文大統領は1月10日の新年記者会見で、日韓合意について「韓日両国間の公式的な合意」と認めたものの、「日本は真実認識し、謝罪を」と述べた。かねて文大統領は「大多数の国民が情緒的に受け入れられない」「正当性を認めるのは難しい」と主張しており、今さら引くに引けないという事情もあるのだろう。しかし、日本がそれを忖度する理由はない。
『日中開戦2018 朝鮮半島の先にある危機』 今後の安倍政権の課題だが、まずは北朝鮮の問題、そしてその後には安全保障上の問題として中国の問題がある。中国では、10月の共産党全国大会で、習近平体制がますます磐石なものとなった。そして先祖返り的に「新時代の中国の特色ある社会主義」が推し進められようとしている。今後は、政治的にも経済的にも中国との間にますます軋轢が増えるだろう。そういう意味では、すでに日中間の戦争が始まっているともいえる。 世界各国でも、ナショナリズムを掲げる政党が躍進しており、まさに冷戦時代へ巻き戻った。このような世界の大きな流れを踏まえた上で、あらゆる角度から日本と中国の現状を分析することで、戦争の可能性について探っている。