司法修習を管轄し、修習生に対してカネを貸す立場の最高裁は、いったい何を考えているのか?
筆者の取材に対し最高裁は、「貸与制への移行は基本的に立法政策の問題であるから、裁判所が見解を述べることは差し控えたい。税金から貸与される以上、保証人を立ててもらうことには合理性がある。オリコは公正な企画競争の結果、選定した」と回答した。なお、「公正な競争」に応募した金融会社は、オリコのほかわずか1社だ。
開始からわずか数カ月で批判集中の貸与制
これではまずいと、「政治」も腰を上げた。
前述の集会では、民主党法務部門会議で座長を務める松野信夫参議院議員が、「自民党、公明党と何度も実務協議を重ねた。しっかりした法曹養成に関する審議会を立ち上げ、給費制復活も含め経済的負担軽減を検討する」と表明。弁護士でもある公明党の大口善徳衆議院議員も、「このままでは法曹の基盤が崩れる。審議会の結論が出たら、工程表を作って、政府にはすぐ対応してもらう」と発言し、与野党議員が口を揃えた。
国会では現在、経済的困難を抱えた元修習生(弁護士ら)に対し貸与金の返済を猶予する「裁判所法の一部を改正する法律案」が審議中だが、民主・自民・公明は、4月20日に交わした3党合意にもとづいて、松野、大口両議員が語った「法曹養成に関する審議の場」設置を盛り込んだ修正案をまとめた。昨年11月から始まった途端に修正が必要になるとは、貸与制の欠陥は隠しようもない。
日弁連・司法修習費用給費制存続緊急対策本部委員の新里宏二弁護士は、「3党合意のなかに、給費制復活の望みが残された。まずは今国会で、修正案を通してほしい。ただ、法曹養成改革は大問題だ。『希望者が誰でも目指せ、国民に信頼される制度』をつくるために、日弁連一丸となって取り組みたい」と話している。
法曹界をより健全なものにするためにも、法曹育成改革は待ったなしだ。法案審議から、目が離せない。
(文=北 健一/ジャーナリスト)