カジノを含めた統合型リゾート(IR)の整備を政府に促す法律、通称IR推進法案が成立してから1年以上が経過した。政府は、IRの議論を加速させているが、誘致に力を入れていた自治体の姿勢に微妙な変化が見られるようになった。
その理由は、政府と自治体におけるIRへの温度差だ。IRの目玉であるカジノは、経済効果が期待できる一方で依存症対策や治安悪化といった負の要素も大きい。また、IRの開発は国が主導するのか、地元が主導するのかといった面でも議論が分かれている。国主導となれば、地元にもたらされる経済効果・インフラ開発・雇用・観光促進といったプラスの効果は期待よりも小さくなる。しかし、地元主導は望めそうもない。
そんな思惑から、IR推進から一転して、横浜ではIRへの期待がしぼみつつある。政府は、IRを設置する都市を当面は2~3カ所としている。これまで、招致レースは横浜と大阪が最有力候補と目されてきた。横浜が招致レースから脱落するとなると、大阪が大本命に浮上する。
実際、大阪府と大阪市は2025年の万博招致を一丸となって進めており、IRも同じように誘致活動を展開している。大阪ではIR用地も確保し、すでに万全の受け入れ態勢を整えている。
しかし、ここにきてIRが必ずしもバラ色ではないことが徐々に判明し、誘致をしていた自治体にも動揺が広がっている。政府が依存症対策として打ち出した制限が厳しいというのが、その理由だ。
IR、苦戦必至?
現在、政府が方針を示している依存症対策では、カジノへの入場料を設定し、入場回数の制限も盛り込む予定としている。与党の自民党内でも入場料・入場回数制限の見解はまとまっていない。さらに、公明党は自民党よりも厳しい制限を課すことを求めている。仮に現行の政府案でまとまれば、カジノへの入場料は6000円、入場回数は週3回かつ月10回という制限になる。
IRの誘致によって経済効果を見込んでいた大阪は、厳しい制限を課す政府案に難色を示している。正確には、大阪というより大阪維新の会が表立って政府案に反対しているのだ。
その理由は、「こんな厳しい制限下では、カジノを開設しても採算が取れない」というものだ。IRを開設するには、インフラ整備に多額の費用がかかる。そうした建設費を投じるからには、IRを黒字にしなければならない。IRといっても、カジノだけではなくホテルやショッピングビルといった商業施設もあるが、やはり収入の稼ぎ頭はカジノだから、カジノに入場料や入場制限を課されることになれば、売上にも大きな影響が及ぶ。
IRによって地域経済の活性化を目論んでいた大阪維新にとって、規制はできるだけ緩和してもらい、売上を増やしたいというのが本音なのだろう。