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しかし、米朝首脳会談が中止されたことで、アメリカは中国への圧力をさらに強めることになるだろう。すでに貿易摩擦に発展している中興通訊(ZTE)への制裁に関しても、トランプ大統領は最大13億ドルの罰金を科すとともに経営陣の刷新を求める案を明らかにしており、ウィルバー・ロス商務長官はアメリカ側が選んだ人物をZTEに送り込み、同社に法令順守部門を設置させる可能性も示唆している。中国としては、アメリカによる査察体制の受け入れを許せば他業種にも波及する恐れがあるため、この条件はのみたくてものめないだろう。
それに先立って行われた米中通商協議では、中国がアメリカの製品やサービスの輸入を大幅に増やすことで合意したが、アメリカが要求していた対米貿易黒字の2000億ドル削減については具体的な言及がなく、成果は乏しかった。中国としてはZTEの制裁を緩和してもらいたいのはやまやまだが、米議会が強硬に反対している以上は望み薄だ。そこで、輸入拡大でお茶を濁しているという苦しい事情が見て取れる。
アメリカの国防権限法案には先端技術を保有する企業同士の買収を禁じる項目なども入っており、このままいけば、かつての対共産圏輸出統制委員会(ココム)のような仕組みがつくられる可能性もあるだろう。
冷戦期に自由主義陣営を中心に構成されたココムは、共産圏諸国への軍事技術や戦略物資の輸出規制を目的とした組織である。すでにアメリカは知的財産権の侵害を理由に中国製品に対する制裁を進めていることからも、今後は中国を狙い撃ちにするかたちの21世紀版ココムがつくられたとしてもおかしくない。
いずれにせよ、米朝首脳会談の中止は米中の対立を決定づけるものになりそうだ。
(文=渡邉哲也/経済評論家)
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