失業率から漏れた「働けない人=ミッシングワーカー」、103万人の悲惨な実態
求職者支援制度のもとで実施されている支援訓練のコース(3~6カ月)は、介護福祉をはじめIT関係、医療事務、経理事務、営業販売、ビルメンテナンスなど、非常に多岐にわたる。社会人としての基礎能力を養う「基礎コース」(2~4カ月)を先に受講することも可能だ。
いずれも民間専門学校が実施するもので、雇用保険受給者向けの委託訓練と重なるものも多い。厚生労働省によれば、17年度の1年間に1896コースが実施され、1万1000人が受講。受講者の就職率は全体で65.1%だった。
だが、残念ながら、国の広報が十分でないためなのか、受講者は年々減少の傾向にある。発足した11年度に5万人いた受講生は、15年度には1万9000人と、ピーク時の4割を下回っている。
「短期の訓練コースを受講しても、そう簡単に就職できるわけがない」との批判は、雇用保険受給者向けの公共職業訓練でも昔から根強くいわれるが、その認識は根本的に間違っている。
なぜならば、失業した人がとりあえず、毎朝起きて出掛ける場所ができ、そこには共通の目標に向かって進もうとする「仲間」がいるというだけでも、生活改善効果には天と地ほどの差があるからだ。
また、自己流で闇雲に就職活動を続けるのではなく、スクールサイドとハロワが連携して就職先を紹介してくれることも考えれば、ほかに代わりがない貴重な支援といえる。
非正規雇用のスパイラルに陥った人を、出口である「安定した雇用」につなげることは、相当に難しい課題である。雇用情勢が多少好転したとしても、一朝一夕に達成できるものではないことは、肝に銘じるべきだろう。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)