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日向咲嗣『「無知税」回避術 可処分所得が倍増するお金の常識と盲点』

失業率から漏れた「働けない人=ミッシングワーカー」、103万人の悲惨な実態

文=日向咲嗣/ジャーナリスト

雇用保険と生活保護の中間のセーフティーネット

 これらは、拙著『求職者支援制度150%トコトン活用術』(同文館出版)の冒頭で紹介した事例からの抜粋である。

 非正規雇用が激増した結果、彼らのように、政府が発表する完全失業率にカウントされないミッシングワーカーも急増しているとみられている。

 冒頭のKさんにしても、就職内定した瞬間に求職者でなくなる。希望条件とはほど遠い非正規雇用でなんとか食いつないでいる期間は、失業者にはカウントされない。

『雇用保険、給付金を大幅削減~』記事でも述べたように、日本では失業したときのセーフティーネットの網からこぼれ落ちる人が少なくなく、雇用保険ですらつい数年前まで「短期契約の非正規は対象外」として、加入手続きが取られないケースが多かった。

 また、雇用保険を受給できたとしても、どんなに勤務先がブラックでも、退職願を出した瞬間に退職理由は「自己都合」となるため、最長でも150日、10年未満勤務の人は90日分しか受給できない。

 そこで注目したいのが、雇用保険を受給できない人を対象としたセーフティーネットだ。

 08年に発生したリーマンショックのとき、雇用保険と生活保護の中間に位置する新たなセーフティーネット構築の必要性が叫ばれた。雇用保険の受給資格のない人向けに訓練奨励金付きの「基金訓練」が期間限定の暫定措置としてスタート。この制度の仕組みをそのまま受け継いで、11年10月に恒久制度として発足したのが「求職者支援制度」というセーフティーネットである。

 この制度の最大の目玉は、雇用保険を受給できない人は、指定の訓練を受講すれば月10万円の手当がもらえる「職業訓練受講給付金」だ。

 この受講給付金をもらえるのは、「すべての訓練に出席する」ことが要件。やむをえない事情があった場合には、その日を除いて8割以上出席(やむをえない事実を証明する書類を提出必須)しないと、給付金は1円も支給されない(14年度からは、2分の1日出席も出席率に換算可となるなど、運用が一部緩和された)。

 また、職業訓練受講給付金は国が指定した訓練コースを受講さえすれば誰でももらえるわけではない。「本人収入月8万円以下」「世帯収入月25万円以下」「世帯全体の保有金融資産300万円以下」など、基本的な支給要件をクリアする必要がある。

 安易に給付金をあてにして支援訓練を受けようとするのは禁物だが、雇用保険の受給資格の獲得が困難だったり、雇用保険を受給満了しても就職が決まらなかったような非常事態には、大いに使えるのがセーフティーネットである。

 なお、発足時にはなかった「通所手当」(定期代相当)や、家族と別居して寄宿する場合の「寄宿手当」(月額1万700円)も追加されている。

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