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日向咲嗣『「無知税」回避術 可処分所得が倍増するお金の常識と盲点』

失業率から漏れた「働けない人=ミッシングワーカー」、103万人の悲惨な実態

文=日向咲嗣/ジャーナリスト

2カ月ごとに契約更新のアルバイト

「契約期間は2カ月ですから、更新回数は18カ月で9回だと思います」

 雇用保険に加入したいというYさん(20代男性)の相談メールからは、勤務先の悪質な“社保逃れ”の実態が浮かび上がってきた。わざと契約期間を短くして、社会保険に加入しなくても済むよう巧妙に工作されていたのだ。

「社員登用制度あり」との文句に魅力を感じ、Yさんが大手家電量販店にアルバイトとして入社したのが1年半前。1日11時間拘束の10時間勤務(2年めからは1日9時間拘束の8時間勤務)にもかかわらず、契約書では始業・終業時間が「予めシフトに定められた通り」と記されているだけで、所定労働時間・日数の記載は一切ない。

 勤務日数もほぼ正社員と同じなのに、短期アルバイトと同じ扱いをされて、健康保険、厚生年金はもちろん、週20時間以上のアルバイトならだれでも加入できるはずの雇用保険にすら加入手続きがされていなかった。

 そんななかでも「正社員になれるなら」と、将来に望みを抱いてがんばってきたYさんだが、正社員登用の声はいつまでたってもかからなかった。

 ある日、よかれと思ってしたことをサボっていると勘違いした上司から「お前は、やめさせるリストに入れたから」と言われてしまった。その精神的ショックが引き金となり、Yさんは慢性的な不眠症と食欲不振に悩まされることになった。そして半年後、通勤途中に倒れて、雇用保険なしのまま退職を余儀なくされた。

 ちなみに、筆者が本人に代わって労働局へ大手家電量販店の違法事実を通報したところ、「本人からの実名告発でないと指導できない」と、担当官は調査することを拒否した。

ニートが長く、社会生活を始められない

 東北地方に住むTさん(25歳女性)は最近、一念発起して就職活動を始めることにした。

 学生時代から社会不安障害を抱えていたため、卒業後は就職せずに実家でニート生活。ときどきアルバイトはしていたものの、責任のある仕事を任された経験がなく、やりがいや達成感を得る機会がないまま時間だけが経過していくことに対して、次第に焦りを感じるようになったと言う。

「このままでは将来になんの希望も見いだせない」と感じて再スタートを切ろうとしたが、実際にハローワーク(以下、ハロワ)に通ってみると、難しさばかりが先立ってしまう。

「応募の条件として『社会人経験があること』が挙げられていたり、応募にあたってハロワの紹介状のほかに職務経歴書も書かないといけないみたいなのですが、アルバイトの経験しかなく、どう書けばいいのでしょうか」と、Tさんは悩んでいる。

 そんな彼女がもうひとつ気になっているのが、職業訓練だ。興味があったDTP(机上出版)やウェブデザインのコースを受講したいとの希望を持っていて、実際にスクールの見学にも出かけたが、情報を集めているうちに、「本当に就職できるのか?」などの不安が頭をもたげてきて、なかなか一歩を踏み出すことができない。

 雇用保険に加入できるほど働いていない現状では、実家暮らしとはいえ、無収入のまま訓練期間を過ごさざるを得ない。一緒に暮らしている父親は、もうすぐ定年を迎えるとのことで、いつまでも親に甘えてばかりもいられないという、焦る気持ちばかりが先立つ。

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