しかし、強豪国に善戦できたのは、今回が初ではない。ジーコ監督時代にも、フランスやブラジルと打ち合いを演じた。それでも、本大会での結果はいわずもがな。善戦だけでは意味がないことは、史実が物語っている。
ただし、今大会は非常に有益なものだったと思う。それは、ザッケローニ監督の“監督力”が明確になってきたことだ。
ザッケローニ監督がつくり上げた日本代表は、過去のチームとは違ってワールドスタンダード化されている。強豪国相手にも、腰の引けた試合をすることはない。その手腕は認めるべきだろう。
その反面、選手交代には疑問が残る。2014年ワールドカップ(W杯)ブラジル大会アジア予選で見えたほころびが、今大会では大きな穴になってしまった。多くの元日本代表選手たちが疑問を呈したように、効果的な選手交代は皆無。特にイタリア戦は、ブラジルのようなボランチへのプレッシャーがなく、日本のペースで試合を進めることができていた。ザッケローニ監督の采配次第では、勝てた試合といえる。にもかかわらず、敗れた。皮肉にも、前半に選手交代で修正してきたプランデッリ監督との差が浮き彫りになってしまった。
●これからの1年を考察する
欧州や南米から離れたアジアの島国である日本にとって、コンフェデレーションズカップは最高のテストの場だった。その大会を終えた今、ザッケローニ監督のフィードバックをしっかりと行い、ここからの1年で日本が強豪国に勝てるチームになれるかどうかを見極めなければいけない。
イタリアのクラブを、最長3年で退任してきたザッケローニ監督の経歴を考えると、ここから大きな伸びを期待するのは難しい。監督には、短期型から長期型などさまざまなタイプがいる。短期型でいえば、横浜F・マリノスや東京ヴェルディの監督を務めたアルディレス氏。チームにタイトルをもたらすが、そこから瞬く間に低迷していくパターンだった。日本代表がそうなるというのは大袈裟だが、ヒディンク氏が監督を務めた韓国代表のような大会前の伸びを期待するのは、高望みだろう。また、上述したように、選手交代で流れを変えられるタイプの監督でもない。
一方でセットプレーの質は高められるし、フレッシュな選手を呼ぶことでチームに刺激を与えることは可能だと思う。それをプラスアルファして評価することはできる。
「今大会で、改善点をすべて確認できた。来年を控えて世界の強豪とのギャップを埋めていくことができると思っている」とザッケローニ監督は大会を振り返ったが、ザッケローニ監督に、W杯までの1年を任せるべきかどうか。功と罪を建設的に議論することで、監督、そして日本サッカー協会へ刺激を与えるべき。そういったオルタナティブある提言があって、チームが強くなるのを見てきたはずだ。世界で勝つために、“我々の質”も問われている。
(文=石井紘人/Japan Journal )