起こすなど、ワルを増産する野村證券。
(「ウィキペディア」より)
6月5日、民主党は党内にインサイダー取引の規制強化策を検討する、作業部会を設置すると決定した。資金も人材も不足気味の証券規制当局の権限強化策と、「少なすぎる課徴金」問題の引き上げについて議論するという。
少なすぎる課徴金とは、「増資インサイダー疑惑」に関する次の3つのケースである。
・3月、国際石油開発帝石の公募増資に関して、旧中央三井アセット信託銀行(現三井住友信託銀行)に対し、課徴金5万円。
・5月、みずほフィナンシャルグループの公募増資に関して、旧中央三井アセット信託銀行(現三井住友信託銀行)に対し、課徴金8万円。
・5月、日本板硝子の公募増資に関して、あすかアセットマネジメントに対して、課徴金13万円。
証券取引等監視委員会(日本版SEC)が課徴金を科すべしと「勧告」(制裁を最終的に判断するのは金融庁)した額は、合計26万円である。26億円ではない。同じインサイダー取引の「村上ファンド事件」で、村上世彰氏に対する確定判決は罰金300万円、追徴金約11億4900万円だったことを思えば、破格の安さだ。3件とも公募増資計画が公表される直前に、株価は「謎の下落」を起こしているが、それによる市場への影響の大きさに比べて課徴金の額があまりにも少なすぎると、市場関係者から不満の声が上がっている。
なぜそんなに少ないかというと、彼らはインサイダー取引で、直接儲けたわけではないからだ。例えば、前述した2010年6月のみずほFGの件では、中央三井アセット信託銀行は約117万株を約1億8400万円で売却して、2020万円の売却益を得ているが、2020万円は同信託銀行の収入ではなく、そこに運用を任せていた複数の顧客の収入である。同信託銀行の収入は、売却益に対する運用報酬として顧客から受け取った8万円だけ。課徴金は「経済的利得相当額」となっているから、8万円を上回ることはない。そして、運用を任せた顧客は売却益を受け取った責任を問われない。信託銀行がそんな違法な取引をしているとは知らなかった、いわば「善意の第三者」だからだ。
一方、社名は公式には非公表だが、営業担当者が中央三井アセット信託銀行にインサイダー情報を教えた野村證券はどうかというと、証券取引等監視委員会は課徴金ではなく行政処分を金融庁に勧告している。現行法では、インサイダー取引それ自体では情報を漏らした証券会社の責任は問われないからである。