実際、昨年8月の総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)基本政策分科会で、ある委員は「主力電源を目指すなら、目標比率を30%程度にまで引き上げるべきではないか」と主張している。また、飯田氏が指摘するように、政府が原発維持に固執している姿勢は明らかで、50年に向けた戦略で原発を「脱炭素化の選択肢」と位置づけている。世界では、脱炭素の手段としてもっとも有効なのが再エネであることは論を待たない。にもかかわらず“選択肢”という言葉を使うところに、日本政府の往生際の悪さが感じられる。
今回の基本計画の原案に対する意見公募で、5万3403人が「早期原発ゼロ」などを求める署名を寄せたと経産省は発表しているが、結局、こうした声は無視されて原発固執となったわけだ。
なお、基本計画は二酸化炭素(CO2)の排出が多い石炭火力についても「重要なベースロード電源」としている。昨年11月にドイツ・ボンで開催されたCOP23(第23回国連気候変動枠組条約締約国会議)で日本が袋叩きにあったことをすっかり忘れてしまったようだ。
破綻した核燃料サイクル プルサーマルで原発維持
この4年間、原発をめぐっては「もんじゅ廃炉決定」という劇的変化があった。高速増殖炉もんじゅは核燃料サイクル政策の要だった。原発の使用済み核燃料から取り出されたプルトニウムは核兵器の材料となるため、アメリカからも削減するように求められており、基本計画のなかでも「保有量の削減に取り組む」としている。どうやって減らすかといえば、プルサーマル(プルトニウムを含む核燃料を普通の原発で使う)を推進するというのだ。飯田氏は次のように指摘する。
「ほとんど減らないですよ。本来は元を絶つという意味で、使用済み核燃料を再処理しないことが重要なのに、逆手にとって、プルサーマルの原発を再稼働させようということ。原子力ムラに都合がいいルールの結果、使用済み核燃料は1万7000トンも溜まった。プルトニウムは48トンもある。電力会社は使用済み核燃料を有価物の資産として計上しているので、もし、再処理しないと決めると、それはすべて巨大なゴミとして負債になり、大手電力会社は債務超過になってしまう。原発を始めた50年前も、核のゴミは将来なんとかなると考えていた。今回の計画でも何も変わっていない」
もんじゅの後継として、フランスの高速炉「アストリッド計画」に乗ることを政府は決めているが、これも実現するかどうか不透明だ。フランス政府は2019年までにアストリッドの基本設計の検討を進める計画を示しているが、2020年以降の進め方は決まっていない。ヨーロッパで唯一の“原発大国”フランスでさえ、発電量の約7割を占める原発への依存度を2025年までに5割に減らすとしている。
日本政府はとりあえず核燃料サイクル維持の体裁だけは整えたかたちだが、安倍政権は2030年まで続かないのだから、今回のエネルギー基本計画も3~4年後に大幅変更されるのではないか。
(文=横山渉/ジャーナリスト)