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以上の前提の下で、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(2017年推計、出生中位・死亡中位)を利用し、65歳以上の被保護人員(生活保護を受給する高齢者)を予測したものが、以下の図表である。
低リスクケースでは、65歳以上の被保護人員は、2015年の約97万人から2050年に約110万人に微増するだけだが、高リスクケースでは2048年に2倍超の200万人を突破し、2065年には215万人にも急増する。2065年の65歳以上人口は約3380万人であるから、215万人は6.4%で、100人の高齢者のうち6人が生活保護を受けている状況を意味する。
では、生活保護費の総額はどう推移するか。2017年度における生活保護費の総額は約3.8兆円で、約214万人が生活保護を受給している。1人当たり平均の生活保護受給額(名目)が一定で変わらないという前提の下、既述の「高リスクケース」と「低リスクケース」で生活保護費の総額を簡易推計したものについても図表に描いている。
低リスクケースでは2025年頃までは概ね4兆円弱であるものの、それ以降では緩やかに減少し、2065年には2.9兆円になる。だが、高リスクケースでは、2029年に5兆円を突破し、2067年には6.7兆円にまで増加する。
貧困高齢者の問題がこれから深刻さを増すのは明らかだが、現行の社会保障で本当に対応することができるのか。社会保障財政の持続可能性を高めるためには安定財源が必要であることはいうまでもないが、すでにさまざまな「綻び」が顕在化しつつあるなか、生活保護のあり方を含め、「社会保障の新たな哲学」についても検討を深める必要があろう。
(文=小黒一正/法政大学経済学部教授)
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