「我が国および米国を含む国際社会は、アフガニスタン政府自身による国造りを後押しする前提のもとで、約20年間にわたり、アフガニ……スタンのこの、安定化と復興に向けて一体となって取り組んできました。
今般、『タリバンの首都、カブール』への『にゅういき(入域)』によって、『カニ政権』はこれ機能しなくなりですね、タリバンへの権力移譲の流れとなりましたが、今後の『じょうねつ(情熱)』は依然として、情勢というのは不透明であるこのように思っています」(『』は編集部、発言ママ)
17日に首相官邸で開かれた記者会見で、菅義偉首相は米ウォールストリートジャーナルのピーター・ランダース記者から「アフガニスタンでタリバンが政権を奪取したことについての日本政府の受け止め」を聞かれ、以上のような支離滅裂な答弁を行った。タリバンは「組織名」であり、「カブールは国家としてのアフガニスタンの首都」だ。軍事組織が首都を攻略したことを「入域」とは言わない。そして、アフガニスタンの国家元首はアシュラフ・ガニー大統領で、正しくは「カニ政権」ではなく「ガニー政権」だ。なお18日に首相官邸公式サイト上にアップされた会見録では、読み間違えは修正されて記載されている。上記のやり取りは実際の会見動画から書き起こした。
会見は新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言の拡大などについて説明をする趣旨の場であったものの、国際的な大問題となっているアフガニスタン情勢の受け止めが出るのは決して不自然なものではないだろう。想定問答集の原稿通りに読んでいれば、このような間違いはないはずだが……。
”原稿棒読み”がTwitterトレンドに
冒頭のやり取り以外にも、この日の菅首相の会見は精彩を欠いた。緊急事態宣言に関しては抑揚のない口調で、プロンプターの原稿を棒読みしているかのように同じ説明を繰り返した。この模様を受け、18日午前には「原稿棒読み」がTwitterのトレンドに入った。
会見で注目を集めたのは、菅首相の棒読みに業を煮やした中国新聞(広島市)だった。先週末から今週にかけて豪雨災害の甚大な被害にあった広島市内の避難所での感染対策とあわせて、以下のように質問した。
「緊急時は総理の分かりやすいメッセージが求められているが、今回の会見もそうだが、原稿の棒読みところがこれまでも指摘されている。分かりやすく国民に伝えることが求められている中で、広島での原爆の日の式典でのあいさつの読み飛ばしもありましたが、どのように政治のメッセージを伝えていくのかお伺いさせてください」
菅首相が今月6日の広島平和記念式典のあいさつで「広島市」を「ひろまし」、「原爆」を「げんぱつ」などと読み間違え、一部を読み飛ばしたことは記憶に新しい。中国新聞の記者に対し、菅首相は次のように回答した。
「必要な情報を適時的確に、丁寧にわかりやすく発信することが大事だと思っております」
一連の首相会見を見た英国紙記者は次のように話す。
「日本のTwitterの投稿を見ていて驚いたのは、菅義偉首相の言い間違いや読み飛ばしを『アナウンサーじゃないんだからしょうがない』などと擁護する声が多いことです。どこの国のトップもスピーチ原稿の内容をしっかり読み込むのは当たり前のこと。その上で、国民によりわかりやすく、より伝えやすくする努力をするものです。
一般的に国家の代表者が公式の会見で発言したことは、国家の意思そのものです。まかり間違えば戦争に発展する重大なものです。テレビニュースのアナウンサーの読む原稿とは比較になりません。かつて米トランプ前大統領も会見やスピーチの誤りがたびたび問題になっていましたが、国家名を間違えたり、元首名を間違えたりするということは、『その国を重視していない』と国際社会に捉えられても仕方がありません」
(文=編集部)