具志堅副会長はその緊急会議後に会見を行い、「(光男氏が)あれは全部嘘だというのは、体操関係者として非常に残念な言葉」「18歳の少女が嘘をつくとは思わない」としており、塚原夫妻に厳しい姿勢を取っているようにもみえる。
塚原夫妻といえば、光男氏が競技委員長、千恵子氏がナショナル強化部長に就任していた1991年の全日本選手権で、審判全員を2人が指導する朝日生命体操クラブOBで固め、朝日生命の選手に有利な採点を出したとして大量の選手がボイコットする事件を起こしたことで知られている。
今回の宮川選手の告発を受け、世界大会メダリストをはじめ多くの有名体操OBたちが一斉に協会の体質や運営手法に批判の声を上げているが、協会の内情を知る関係者は語る。
「30日の緊急会議に塚原夫妻は出席しておらず、世間から協会への批判をかわすためには塚原夫妻を“切る”しかないという声も出たようですが、30年にわたって協会を牛耳ってきた塚原夫妻の影響力はあまりに大きく、シンパも多いので、これを契機に2人を排除できるかは微妙というか、難しいでしょう。
(31日に)速見コーチは、処分を不服として東京地裁に行った地位保全の仮処分申し立てを取り下げることを表明し、協会からの処分を受け入れると共に謝罪文まで発表しましたが、協会サイドが速見コーチに働きかけ、登録抹消の取り消しと宮川の指導続行を認める代わりに、そうさせたともいわれています。そして、そこには塚原夫妻の意向が働いていたとみられています。日本の体操界は狭い世界なので、協会を敵に回せば、この世界でやっていくのは難しいのが現実です。まだ30代前半と若く、さらには宮川の指導を続けたい速見コーチとしては、協会の提案を受け入れざるを得なかったのは容易に想像できます」
また、協会の内情を知る別の人物も語る。
「塚原夫妻が31日に出した声明を読めばわかるように、2人はまったく反省していません。具志堅副会長は会見で塚原夫妻を非難するかのようなポーズを見せましたが、その具志堅副会長にしても、塚原夫妻にはモノを言えるような立場ではありません。今回の件を受け、体面上は塚原夫妻に対してなんらかの処分を下すかもしれませんが、それによって2人による強権政治が終わると考えている関係者は協会内部にいないでしょう。
現在、協会は内部の関係者たちに対し、マスコミの取材等には一切応じないよう箝口令を敷いています。もっとも、そんな箝口令がなくても、塚原夫妻による犯人探しを恐れて、誰も批判の声を上げられないでしょう」
実際にある記者は「何人か協会の人間に取材をかけたが、全員から『話せないことになっている』と断られた」と明かすが、今こそ協会の自浄作用が問われている。
(文=編集部)