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以上のように省エネと経済効果が不確かななかで、システムリスクと高い社会的コストを伴うサマータイムを導入するのは説得性に欠ける。しかし、政治家は突き進むのである。日本の政治家は、消費税の軽減税率といい、合理性を欠き目先の人気取りのために将来に禍根を残すことを平気で行うのである。国民としては、そのような政治家に投票し続けるのはもうやめるべきではないか。
現行のサマータイム案
8月6日付産経新聞によると、現在、政府と与党で検討されているサマータイム案では、夏に時間を2時間繰り上げる夏時間を、2019年と2020年に2年間限定で導入する方向のようである。そして繰り上げ期間として、「最も暑い6~8月を軸に数カ月間だけ2時間繰り上げる方向で検討に入った」とある。もしこれが本当なら、政治家の発想を疑わざるをえない。
まず、2時間繰り上げは、世界に類のない異常な繰り上げである(例外として、連合国占領下のドイツで1945年と1947年に2段階のサマータイムを実施)。医師でなくとも健康に悪いというのはわかる。また、6~8月を軸に数カ月間というのも合理性がない。欧米では、明るい時間帯を長くするためにサマータイムがあるので、約7カ月(2018年は3月25日から10月28日)、北米では約8カ月(3月11日から11月4日)である。実施国を見ている限り、数カ月ではサマータイム本来の意味がないと思われる。さらに、2年間の限定導入というのも理解できない。もし、本当に2年間の限定導入というのであれば、コンピュータのシステム改修の多大なコストと手間とリスクをどう考えているのであろうか。
以上、サマータイムをめぐる議論の政治的な文脈を総括したが、自民党が検討を進める現行案は議論するに値しないといえる。次回は、より本質的な意味での日本社会におけるサマータイムの必要性について考えてみたい。
(文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授)
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