シリアでの拘束から解放され、無事に帰国を果たしたジャーナリスト・安田純平氏。その行動をめぐって“自己責任論”が噴出し、著名人の間でも賛否が分かれている。
安田氏がシリアで行方不明になったのは2015年6月のことで、当時、トルコを経由してシリアに密入国後、武装勢力に拉致されたのではないかと報道された。消息については情報が錯綜していたが、16年3月に安田氏と思われる男性がフェイスブックに投稿された動画に登場。家族へのメッセージのほか、拘束中の状況を日本政府に向けるようなかたちで語った。
同年5月に新たな画像が公開され、手に掲げた紙には「助けてください これが最後のチャンスです 安田純平」と日本語の手書き文字が。その後も、韓国人名を名乗る動画や銃を突きつけられた映像が公開されるなど切迫した状況が続いたが、今年10月23日に事態が急転した。安田氏が解放されたという情報がカタール政府からもたらされ、翌日には河野太郎外務大臣が安田氏本人であることを発表したのだ。
無事が確認され、25日に帰国の途についた安田氏を待っていたのは、歓迎だけではない批判の声だった。安田氏は過去にも拘束・解放された経験があるため、インターネット上では「また日本に迷惑かけた」「自分から危ない橋を渡ってるんだから……」「もし身代金が支払われたら、テロ組織の資金になるかもしれないし」といった声が続出した。
安田氏の解放については、カタール政府が3億円以上の身代金を支払ったとの報道もある。日本政府は否定しているが、ダウンタウンの松本人志も『ワイドナショー』(フジテレビ系)で身代金について言及し、「ジャーナリズムってなんなんだろう」と疑問を呈していた。
自己責任を問う声が高まる一方で安田氏を擁護する声も多く、「安田さんみたいな人がいるからこそ、まだ知られていない世界情勢が見えてくる」「命を失う覚悟で行ってるんだろうから、自己責任論を持ち出すのは違うと思う」といった意見が見られる。
メジャーリーガーのダルビッシュ有投手(シカゴ・カブス)は、“自業自得”という指摘に対して「一人の命が助かったのだから、自分は本当に良かったなぁと思います」「ルワンダで起きたことを勉強してみてください。誰も来ないとどうなるかということがよくわかります」とツイッターで反論した。
11月2日には、帰国後初めてとなる安田氏の記者会見が行われた。冒頭で安田氏は謝罪と感謝を口にし、武装勢力の目的が「日本政府に金を要求」するためだったと告白。自己責任論については、「紛争地に行く以上、当然自己責任と考えている。自分が相応の準備をすることが必要」「みなさんに批判をいただき、検証していただくことは当然と思っている」と語った。
さらに、過去の家族に対するメッセージの「オクホウチ」は妻への暗号だったことや、動画撮影では武装勢力から渡された台本を読み上げたことなどを明かした。しかし、武装組織の名前や解放に至った経緯をはじめとして、いまだ不明な点は多い。
そのため、一部ネット上では「意味のない開き直り会見だった」「まるで安田さんの独演会」「長々と体験談を語っていたが、聞きたいポイントはそこじゃない」という声もあがっている。
果たして、真相が解明される日は来るのだろうか。
(文=編集部)