2012年、フィリピンへ最も渡航したのは、韓国人である。その数103万人と、アメリカ人65万人、日本人41万人、中国人25万人を大きく引き離している。フィリピン・セブにおける韓国系語学学校の歴史は長く、スポーツジムやプールを完備、オーナーが家族と共に現地へ引っ越すなど、本気度も高い。
そのようななかで、最近は、日本人の需要に応じた市場調査やマニュアル作成も積極化させている。本連載で今まで紹介したQQイングリッシュ、NILS、セブボーディングハウス、サウスピークなどの日系に焦点を絞っても、各語学学校には大きな違いがある。例えば、校則、カリキュラム、日本人比率、留学生の雰囲気、立地、食事などの要素だ。
留学希望者は今まで、数百ある語学学校から自分に合う留学先を選ぶため、エージェントや学校へ直接問い合わせるしか方法がなかった。しかし、ここ最近になって新たな選択肢が生まれた。フィリピン留学の口コミ情報サイトSchool With(スクールウィズ)である。代表の太田英基は「フィリピン留学は着火材の役割を担う。3カ月の留学だけでは世界に通用しませんが、そこからの学習を継続していく大きなきっかけとなるでしょう。昨年は2万人の日本人がフィリピン留学をしている。この体験を通して、頭の中にある日本地図を世界地図に塗り替えてほしい」と語る。
フィリピンの経済成長率は、12年…6%、13年…7%と上昇傾向である。同時に、消費意欲の高いフィリピン人からの人気を集めた、地場ブランドも数多く育ってきている。例えば、携帯産業ではチェリーモバイル、マイフォン、スターモバイルなどが台頭している。依然としてサムスン、ノキアブランドが高い人気を誇っているが、これら地場メーカーはとにかく安い。最安価格帯の携帯端末は約1500円、スマートフォンは約1万円で手に入る。
また、ファッション・美容産業では、アパレルのベンチ、ビューティークリニックのベロなどが人気だ。ホテル、ダイビング、スパ、不動産物件、ビザなど、セブの情報を網羅するポータルサイト&フリーマガジン「セブポット」。同媒体を運営するピナカポットディストリビューション代表の佐藤尋子は「フィリピン人は美容への関心が非常に高く、髪質、化粧、ネイルなどへのこだわりも強い」と話す。
不動産開発も活発だ。セブで建設中の巨大ショッピングモール「SMシーサイド・シティセブ」は40万9000平方メートルを誇り、これは東京ドーム約10個分となる。セブの最新情報を提供するマガジンサイト「エキサイトセブ」を運営するドリームライン・プロダクション、チーフ・クリエイティブオフィサーの牧野幹男ジュニアは「このモールは完成後、お店を1600店舗構えることができる。フィリピン国内最大で世界4番目の規模の『SMモール・オブ・アジア』よりも大きなモールとなる」と語る。
従来の旅行者や駐在員に加え、語学留学・IT関連企業の進出・リタイアメント移住(定年退職後の海外移住)などを目的に、渡航者が増え続けるフィリピン。在留邦人は約1万8000人とされており、長期滞在の人気も集まっている。 平均年齢が若いまま増加し続ける人口動態、質の高い英会話、日本人にも身近なカトリックの浸透、LCCによる周辺国へのアクセスの良さ、フレンドリーな国民性などの強みを持つフィリピン。これから世界へ挑む日本人にとって、フィリピン人は良きパートナーになるに違いない