大坂が前コーチをなじっていた?
大坂がバイン氏とコーチ契約を結んだのは、2017年12月のこと。その当時の大坂の世界ランキングは53位だから、そこからわずか14カ月でランキングトップにまで上りつめたことになる。
「セルビア生まれのドイツ人であるバイン氏は、元選手。といってもプロとしての経歴はたいしたことがありません。ドイツのブンデスリーガ2部でプレーし、ランキングは1149位が自己最高。その後、“女王”の異名も持つセリーナ・ウィリアムズのトレーニングパートナー(練習相手)を務め、さらにその後に大坂のコーチになったんです」(スポーツ専門誌記者)
セリーナ・ウィリアムズといえば、WTA(女子テニス協会)ツアーで通算72勝(シングルス)、生涯獲得賞金8000万ドル強を稼いだ超一流選手だ。2018年9月の全米オープン決勝でも、大坂と対決している。話題となったこの試合における審判への執拗な抗議シーンからもうかがえるように、勝利への執着心が非常に強く、気難しい一面も秘めている。しかし、そんな彼女のパートナーを8年も務め上げたのだから、バイン氏も“裏方”としては超一流だったのだろう。それは、WTA年間最優秀コーチ賞の受賞(2018年)という形で証明されている。
「コーチが一流でも、選手が三流ならそれまで。大坂とは意気投合できたことも大きかったのでしょう。バイン氏には大坂も全幅の信頼を寄せていました」(前出の記者)
しかし全豪オープン中、その信頼関係の“破綻”を感じさせるようなシーンも目撃されていた。一部報道によれば、「準決勝前のバイン氏との練習を10分程度で切り上げてしまった」「決勝直前、大坂が『あなたはいつも違うことを言う!』とバイン氏をなじっていた」等々……というのだ。
大坂と前コーチとのかつての“蜜月関係”
「大坂がバイン氏との二人三脚で快進撃を続けていた2018年前半、ちょうど日本では、学校の部活動における“スポーツ教育”の問題が大きく報じられていました。5月に起きた、日本大学アメフト部における“反則タックル問題”はまさにその象徴でしょう。暴力で学生を服従させる“日本的な指導”に対し、この頃のバイン氏による“コーチング”的な指導が対比的に語られ、それに日本中が好感を抱いたのです」(スポーツ紙記者)
たとえば象徴的なのは、2018年3月のBNPパリバ・オープンでの出来事。ミスを連発し、投げやりになっていた大坂に歩み寄ったバイン氏は、「なおみならできるよ」「僕はよくやっていると思うな。きっとやれる」と、優しく励ましていたのだ。
「こうした過去のある2人であったからこそ、その関係解消をアメリカのニューヨークタイムズやイギリスのBBCまでもが大きく報じたのです」(前出の外国人特派員)
心から信頼し合っているコーチと選手。2人の関係は日本だけではなく、世界中が「理想的な関係」と見ていたということだろう。しかし……
「日本人の母と、タヒチ出身の米国人の父親を持つ大坂には、二重国籍の問題が残っています。今年10月の誕生日までに、日本と米国のどちらの国籍を選ぶのか、決めなければならない。バイン氏とはその件で意見衝突したのだとする声もあれば、大坂が今後の選手キャリアのことを考え、バイン氏の技術面での指導力に不安を持ったのだと言う者もいましたね」(前出の外国人特派員)