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カラスをたずねて三千里「日本カラス紀行」第3回

“カラス不毛の地”大阪に大量の生息地発見!大阪市立長居公園“もぎり取られた枝”の怪奇

文・写真=吉野かぁこ
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高校教師とカラス研究、二足のわらじをはいた先生

 衝動が抑えきれなくなった2018年の暮れ。大阪のカラスにくわしい専門家を探すべく、野鳥調査の総本山「日本野鳥の会」に問い合わせてみる。すると、光の速さでひとりの男性をご紹介いただいた。

 その方の名は、中村純夫さん。大阪の府立高校で31年間教師を務めながら、カラスの生態繁殖とねぐらでの行動を研究されてきたそうだ。ロシアの樺太まで“新種のカラス”を追い求めた『謎のカラスを追う ~頭骨とDNAが語るカラス10万年史~』(築地書館)という本まで出されている猛者だ。ドキドキしながら、教えられた番号に電話をかけてみると、厳格なイメージをがらりと覆す、のびのびとした明るい声で中村さんが出てくださった。先生、本当に大阪にはカラスがいないのでしょうか?

「うーん、そもそもカラスの数が増えたとか減ったという問題は、大規模で定期的に調べない限り本当のことはわからないんですよ」

“カラス不毛の地”大阪に大量の生息地発見!大阪市立長居公園“もぎり取られた枝”の怪奇の画像5条件によっては、40kmぐらい移動することもあるという

 カラスに限ったことではないが、野鳥は“住民票”を持たない上に、長距離を飛んで移動するので、生息数をきちんと計るのは難しいことらしい。それなりに調査費用がもらえて、人員や手間をさかないとできないことなんだろう。繁華街には少ないと感じただけで、周囲の林にはたくさんいるかもしれないし。

「それより、カラスに会いたいなら大阪市内の長居公園に行かれてみてはいかがですか? 結構な数のカラスが昼間もうろついていますよ」

 やはり穴場はあったのだ。初めて耳にする公園だが、一気に高まる期待。それに――と中村さんは続ける。

「実はここ、夕暮れどきにはさらに数が増えるんです。『集団ねぐら』に行く前の集合場所のようです。今の時季だと『ねぐら入り』前の群飛を観察できるかもしれませんね。鳥肌が立つくらい壮大なページェントに出会えたら、病みつきになりますよ」

「ねぐら」とは、その名の通りカラスが夜に眠る場所のことだ。春先から夏は、出産→子育てシーズンのため巣の近くに家族単位で寝泊まりをするカラスたちだが、冬になると、成長した子ガラスや子育てを終えたつがい、そして独身のカラスたちが一同に会し集団で眠りにつくのだ。「ねぐら入り」とは、そのねぐらに向かう集団飛翔のことで、まさに冬の風物詩。夕暮れの空を無数のシルエットが飛んで行くようすは、太古の昔から続いてきた自然界のアートといっても過言ではない。

 中村さんが教えてくれた「ねぐら」は、長居公園から北に20kmほど離れた万博記念公園だった。大阪事情に疎い私でも、それが岡本太郎氏の「太陽の塔」がある地であることくらいは知っている。

 昼の間に愛でたカラスたちを、今度はねぐらでお出迎えできる。最高じゃないか。

 こりゃあもう、行くしかないでしょう。

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