――韓国大法院の判決は、そうした事情を根拠にしているのでしょうか。
吉澤 今回の一連の判決では、「原告らの損害賠償請求権は、日本政府の韓半島に対する不法な植民地支配および侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権という点を明確にしておかなければならない」という点がポイントです。
判決文は「かかる不法行為で原告が精神上、苦痛を受けたことは明白である」「原告らは被告を相手に未支給賃金や補償金を請求しているのではなく、慰謝料を請求しているのである」と続いていますが、徴用工に関する判決はこのロジックで下されています。
問題は、歴史的経緯に鑑み、日本が植民地支配そのものに対する責任を認めるかどうかです。また当時、戦争遂行に協力した日本企業は国策を理由に朝鮮人を雇用しましたが、その雇用環境が劣悪であったことが問題になっています。劣悪な労働環境に対する慰謝料は、先の8項目に該当する未払い賃金とも異なるため、大法院の判決にも合理性があります。
竹島問題は国際司法裁判所で解決すべき
――「完全かつ最終的に解決された」8項目以外に慰謝料の請求権があるということですね。それに対して、日本はどのような立場なのでしょうか。
吉澤 日本政府は「植民地支配は合法だったが、人道的支援を行う」という姿勢です。植民地支配の直接的な責任は回避しています。謝罪を繰り返してはいますが、被害者の立場としては、それで終わるわけではありません。日本政府に「加害者と被害者として関係を修復しよう」という気持ちがなければ、事態は進展しないでしょう。歴史対話を欠いたまま未来志向を目指す手法は限界にきており、日本政府の植民地支配の責任を回避する論理には無理があるといわざるを得ません。
――日韓間では竹島の領有権問題もこじれています。
吉澤 私は「竹島/独島が公文書で領土であることをいつ明記されたのか」という点に注目しています。大韓帝国の官報では1900年、日本の竹島編入は1905年でした。当時、日本としては日露戦争もあり、戦略的に活用する必要があったのです。この問題は国際司法裁判所で解決するのが望ましいですが、必ずしも日本に有利な判断が下されるとは限らないと考えています。