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2023.03.03 11:15
2019.06.05 21:05
片田珠美「精神科女医のたわごと」
元農水次官・長男殺害、「親が始末つける」は危険な発想…無理心中を誘発、親と子は別人格
だから、子供が一定の年齢以上になったら、「血がつながっているとはいえ、親と子は別人格。子供の問題をすべて親が解決できるわけではない。親のほうが先に死ぬのだから、子供の面倒を最後まで見るのは所詮無理」という割り切りが親の側に必要なのだが、実際にはそれができない親が少なくない。
息子を殺害するまで追い詰められた熊沢容疑者の苦悩は、わからないではない。ただ、その根底には、「私物的我が子観」が潜んでいたのではないか。
「私物的我が子観」とは、母子心中の実態を調査した研究から明らかになった傾向である。母親が子供を「私物」とみなし、「一緒に死んだほうがこの子にとって幸せ」「生きていてもこの子は不幸になるだけ」などと思い込んで、母子心中を図る。
平たくいえば、親が子供を所有物とみなす傾向であり、こうした傾向が父親に認められることもある。これを容認するのが危険なのは、引きこもりの子供の将来を悲観した親が無理心中を図る事件を誘発する恐れがあるからだ。
これからは「私物的我が子観」を捨てて、社会全体で子供を見守っていくという「社会的我が子観」を育成しなければならない。
(文=片田珠美/精神科医)
参考文献
片田珠美『拡大自殺』角川選書、2017年
高橋重宏『母子心中の実態と家族関係の健康化―保健福祉学的アプローチによる研究』川島書店、1987年
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