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世界的に干ばつ深刻化、日本で報じられない食料輸入途絶シナリオ…畜産業も打撃

文=小倉正行/フリーライター
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(「gettyimages」より)

 イタリアのドロミテ山系で7月3日に氷河が崩壊し、それに伴う雪崩の発生で7人の死亡者と8人の負傷者が出たことが報じられた。山頂の気温が過去にない高温となったことが原因で氷河が崩壊したとされ、地球温暖化の影響との指摘も出ている。

 近年、地球温暖化による異常気象の影響で、オーストラリアでの大規模な干ばつと山林火災によるコアラの絶滅危機(2020年)、北米における熱波による小麦・菜種生産の深刻な打撃(21年)、ブラジルの異常気象によるコーヒー豆の不作と価格高騰などが発生。私たちの身近なところに、小麦や菜種価格の高騰や製品値上げの影響が押し寄せている。

 昨年発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)6次報告書(政策決定者向け要約)は、次のように地球温暖化による異常気象の脅威を記している。

「同時に発生し、繰り返される気候ハザードはすべての地域で発生し、健康、生態系、インフラ、生活、及び食料への影響とリスクを増大させる」

「暑熱及び干ばつ現象の同時発生の増加により、作物生産の損失と樹木の枯死を引き起こしている」

「主要な食料生産地域においてトウモロコシの作物損失の同時発生のリスクが増大し、このリスクは、地球温暖化の水準が更に高くなると更に増大する」

過去最大の干ばつ頻度

 海外に食料を依存している日本にとって重大な脅威であるが、6月28日に東京大学生産技術研究所と国立環境研究所が「近い将来に世界複数の地域で過去最大を超える干ばつが常態化することを予測」との共同研究結果を発表した(以下、抜粋)。

「今世紀の半ば頃に可能な限りの温暖化対策を施した場合の脱炭素社会実現シナリオ(RCP2.6)と、CO2排出削減などの温暖化対策を今以上に施さなかった場合の地球温暖化進行シナリオ(RCP8.5)で、それぞれ全球陸域の25%と28%で干ばつ頻度が統計的有意に増加すると予測され、地域によっては頻度が2倍以上に増加しています。いずれのシナリオにおいても、地中海沿岸域、南米の南部と中部、オーストラリアなどが頻度増加のホットスポット地域として確認できます」

「私たちの解析の結果、CO2排出削減などの温暖化対策を今以上に施さなかった場合の地球温暖化進行シナリオにおいては今世紀のうちに全59地域中の18地域で『過去最大の干ばつ頻度を少なくとも5年以上継続して超える時期』が検出されました。温暖化緩和策の推進を想定したシナリオでも、11地域で今世紀中に『過去最大の干ばつ頻度を少なくとも5年以上継続して超える時期』が検出される結果となりました。

 さらに重要なことに、7地域と5地域では、今後30年程度のうちに『過去最大の干ばつ頻度を少なくとも5年以上継続して超える時期』に達する予測となっています。特に南米南西部、地中海ヨーロッパおよび北アフリカでは、どちらのシナリオでも特に早期の『過去最大の干ばつ頻度を少なくとも5年以上継続して超える時期』の値をとりました」

 この研究結果は何を意味しているのであろうか。干ばつは農業生産に深刻な打撃を与える。また、トウモロコシなどの飼料に依存する畜産生産にも打撃を与える。

 ホットスポットとされている地中海沿岸域ではオリーブ油や小麦、南米では大豆、鶏肉、とうもろこし、コーヒー豆、オーストラリアでは、小麦、牛肉などが生産されており、これらの品目について日本は輸入に依存している。過去最大の干ばつが5年以上継続するなかで、これらの農畜産物の生産が困難になるわけである。

 食料自給率37%である日本の将来が暗いということを、この研究結果は明らかにしている。

(文=小倉正行/フリーライター)

小倉正行/フリーライター

小倉正行/フリーライター

1976 年、京都大学法学部卒、日本農業市場学会、日本科学者会議、各会員。国会議員秘書を経て現在フリーライター。食べ物通信編集顧問。農政ジャーナリストの会会員。
主な著書に、「よくわかる食品衛生法・WTO 協定・コーデックス食品規格一問一答」「輸入大国日本 変貌する食品検疫」「イラスト版これでわかる輸入食品の話」「これでわかる TPP 問題一問一答」(以上、合同出版)、「多角分析 食料輸入大国ニッポンの落とし穴」「放射能汚染から TPP までー食の安全はこう守る」(以上、新日本出版)、「輸入食品の真実 別冊宝島」「TPP は国を滅ぼす」(以上、宝島社)他、論文多数

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