「旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と韓鶴子氏」「参政党」、果てはネットワークビジネス大手企業の名前に加え、「NHK党と立花孝志党首」に至るまで、インターネット上の政治カテゴリでトレンドに上がるワードがこれでもかと詰め込まれた事件が発生した。
日本維新の会所属の福岡市議、堀本和歌子氏が、元自民党衆議院議員で、参政党所属のライバル市議候補である新開裕司氏になりすまし、新開氏と旧統一教会との関係を記したビラを配布した事件が大手メディアで次々に報じられた。事件はまず、西日本新聞が26日、記事『【動画】福岡市議、ライバル候補名乗りビラ配布 旧統一教会との関係アピール』でこの問題をスクープ。その後、全国紙やキー局などが次々に報じることになった。
各社報道によると、堀本氏は、参政党ロゴに模したマークを用いた上で、「新開ゆうじです!旧統一教会の式典で元衆議院議員として偉大なる韓鶴子様に韓日トンネルへの賛意と、祝辞を述べさせていただきました!」などと記したビラを8月8日未明から早朝にかけ、同市博多区内の民家や集合住宅などに投函したのだという。
福岡県警博多署が私文書偽造容疑で堀本氏に任意で事情聴取をしているといい、当の堀本氏は「Twitterをリツイートする感覚でやってしまった」などと話し、28日にも市議を辞職する意向を示している。
なお、新開氏は「自民党の時に縁があり、その関係で(旧統一教会の会合で)スピーチしたりしていたことはその通り」などと認めているという。
騒動発覚直前にNHK党立花氏の動画を拡散
そんな堀本氏のTwitterのリツイートの中には、今回の事件に至る同氏の“問題意識”を如実に示すものがあった。堀本氏は事件発覚直前の10月18日、NHK党党首の立花孝志氏がYouTube上に上げた動画『NHK・アムウェイ・武富士・統一教会・参政党 日本から悪質なお金儲けが消える日 窪田順生さん紹介』を2回にわたって拡散していた。自身の所属政党を超えて、N党党首の動画を強く推すほど、参政党や旧統一教会に対する主張があったようだ。
NHK・アムウェイ・武富士・統一教会・参政党 日本から悪質なお金儲けが消える日 窪田順生さん紹介 https://t.co/96RHyeEyTh @YouTubeより
— 立花孝志 NHK党 党首 (@tachibanat) October 18, 2022
全国紙記者は「新開氏を含め、現在の政界の混沌と混乱を象徴するかのような事件で、あまりにもキーワードが多すぎてお腹いっぱいです」と苦笑いする。
新開氏、麻生太郎氏の”もの言い”で自民党公認得られず
新開氏は2012年の衆議院議員選挙の福岡1区に、自民党公認として立候補する予定だった。しかし、公認指定に関して麻生太郎氏の“もの言い”があり、故・安倍晋三総裁(当時)の裁可を経て、同選挙区の公認が井上貴博氏になったという経緯がある。新開氏は比例代表で当選したものの、井上氏や麻生氏との間に確執が残った。井上両氏は14年の衆院選に無所属で立候補。新開氏は落選し、井上氏が自民党から追加公認を受けるという異常事態が起こった。19年4月の統一地方選では福岡市博多区の市議候補として立候補し、4147票を獲得したが最下位当選の議員に124票足らず敗れた。別の全国紙記者は語る。
「新開さんは古賀誠さんの議員秘書でした。麻生さんとの確執は結局、そこまで遡ります。参政党に参画し、衆議院から市議会に場所を移してでも、政治に関わり続けようとする強い執念を感じます。
地方選は数票差で当落が決することもある。だから堀本さんにも焦りがあったんでしょう。仮に新開氏が現職の市議で参政党会派の代表だったら、怪文書配布という手段ではなく、市議会という公の場で旧統一教会との関係を質すこともできたはずですが……」
前回市議選で124票の僅差、迫る新開氏、追われる堀本氏
問題のビラを配った堀本氏は19年の福岡市議選博多区で4271票を獲得したものの、同区での最下位当選だった。つまり、新開氏が124票差の僅差で敗れた相手こそ、今回の騒動の堀本氏だった。追われる者の焦りもあったのだろう。次々に明らかになる旧統一教会と自民党議員との癒着、参政党をはじめとする新興政治勢力の出現――中央、地方問わず、政界の仁義なき戦いは続く。
(文=Business Journal編集部)