がん治療はこれまで外科的治療、放射線を当てる、薬を飲む、という3つしかなかったが、免疫細胞療法は第4の治療法といわれている。1980年代から行われてきたが、効果を疑問視する報道や、粗悪な業者の存在もあり本格的には普及してこなかった。
11月20日に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(再生医療新法)、および「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(改正薬事法)が臨時国会で審議、可決された。これにより、これまで細胞活性化は病院内で行う必要があったが、今後は医療機関からの外部受託や、「再生医療等製品」として加工が可能になった。病院外で数多くの機関からの受託ができるようになり、医療ビジネスとして確立されるようになった。
また、安全性には厳しい基準が設けられたことで、粗悪な医療機関が排除され、患者も安心して受けられる体制が整う。
活気づく支援ビジネス
これまでがんの免疫細胞療法の支援を行ってきた上場企業は、メディネット、テラ、タカラバイオの3社。
メディネットは新法可決直後の12月に、細胞加工業の拡大を目指し、再生・細胞医療用の加工施設の新設を発表した。東京都・品川区に15億円を投じて延べ床面積約3000平方メートルの施設を、14年後半に完成させる計画だ。そのため資本市場から4億円強の資金を調達することも決めている。
テラも先ごろ、免疫細胞医薬品の開発を進めるための子会社を、14年1月に設立すると発表した。同社が手掛けているがんを特異的に攻撃する「樹状細胞ワクチン」について、将来的に医薬品としての承認を目指していく方針だ。
タカラバイオもリンパ球の培養を増強する効果がある独自の「レトロネクチン」を使った遺伝子導入法で、法律の改正前から設備増強計画を有していた。同社では白血病などを対象とする遺伝子治療薬の開発も進めているが、今回の法律可決は遺伝子治療薬の開発進展も期待されている。
3社は、かねてより免疫細胞療法について、積極的に治療のエビデンス(科学的根拠)の構築に努めてきた経緯がある。最終的には、がん免疫細胞療法に保険適用されるようになることが求められている。
(文=和島英樹/経済ジャーナリスト)