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「元決済圏」「オフショア市場」の拡大
だが、今回の「円・元直接取引」の最大の狙いは、「人民元の国際化」であろう。貿易量の増加に伴い「元決済圏」は急速に拡大しており、2011年時点で中国の全貿易額の約1割は元建て決済となっている。また、中国は10年から香港で、規制が緩やかな非居住者向け国際市場(「オフショア市場」)を拡大させており、「点心債」と呼ばれる元建て債券の発行も活発化している。「円・元直接取引」は、この流れを後押しする。
一方、主要各国も、元取引の拡大を目指して、「オフショア市場」の創設を中国に働き掛けている。とりわけ積極的なのがシンガポールと英国で、英国はロンドンと香港を結ぶ市場開設を計画しているほか、すでにロンドン証券取引所で点心債の発行を開始した。
日本にとっても、こうした中国の市場開放に積極的に参画していくことが、国益に資することは言うまでもない。とりわけ、外国籍企業の上場が低迷する東京証券取引所の活性化が期待できる。東京、香港、上海等の主要市場と連携し、「円・元を中核とするアジア主要通貨圏」を構築することも夢物語ではなかろう。今回の直接取引は、その布石とも位置付けられる。
中国の経済成長は、一時の10%を超す勢いは失ったものの、依然として7~8%台の高い水準を維持している。内閣府の「日本21世紀ビジョン」によれば、30年の世界の名目GDPに占める中国のシェアは、米国の32%に並ぶ31%まで高まると予想されている。21世紀はアジアの時代であることは間違いなく、中国が覇権を握る「パクス・シエーナ」を予感させる。
(文=森岡英樹/金融ジャーナリスト)
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