そうした中、特に世間やインターネット上などで冷ややかな声を集めているのが、「AERA」(朝日新聞出版/2月17日号)の記事『アエラは騙されなかった』だ。記事内で同誌は、昨年、佐村河内氏を取材した際に違和感や不信感が残ったために記事を掲載しなかった、と自らを評価しているが、例えばネット上では次のような批判の声が寄せられている。
「AERAお前らなんのために存在するんだよ。事件あるのに被害者増加を見殺し隠蔽って」
「このとき疑問を感じて、追跡取材を続けてたらスクープ取れたしNHKスペシャル【編註:後述参照】の放送前に止められてCD買う被害者が減ったと思う。なんで取材をそれでやめちゃったんでしょうかねえ」
こうした批判はメディア業界の中からも出ており、例えばコラムニストの勝谷誠彦氏は「雑誌としてはみっともない」と、動画共有サイト「YouTube」上の動画『佐村河内守に騙された朝日新聞、見破ったアエラ』(https://www.youtube.com/watch?v=IDj-EWAAubI)内で憂いている。
実際に「AERA」の記事を読んでみても、“後出しジャンケン”の印象は否めないが、なぜ、同誌は掲載を見送っただけで、それ以上、佐村河内氏を追及しようとしなかったのか。
発行元の朝日新聞出版に問い合わせたところ、「取材や編集に関する個別の判断についてはお答えできません」とのことであったが、筆者の想像するに、どんな理由があっても障害者をおとしめたり批判したりするのが、タブーになっていたからではないか。また、追及して万が一、抗議でもされたら面倒だ、と判断したのではないだろうか。一般論として、新聞社はそういうリスクを極度に嫌う傾向にあるが、朝日新聞出版は過去に朝日新聞から分社化されたという経緯を持ち、現在も朝日新聞の完全子会社であることからも、DNAは新聞社そのものである。