しかし、クールビズが浸透するにつれ、ある業界は大打撃を受けることになった。ネクタイ業界である。「クールビズ=ノータイ」という意識が定着すると、必然的にネクタイの販売が落ち込んでいった。東京ネクタイ協同組合の調査では、国内のネクタイの生産量は2001年には約1740万本あったが、05年の小泉純一郎政権時にクールビズが始まると、11年には生産量が01年の3分の1(約570万本)にまで減少した。クールビズによって新たな市場が創造された一方で、衰退してしまった業界もあったのだ。
●エルニーニョ現象で経済に打撃?
さて、今夏の消費動向は、どのようになるのだろうか。まず、現在のそれをみてみよう。インターネット調査会社マクロミルが定点観測している「MACROMILL WEEKLY INDEX」の「買う予定のもの」>「洋服」をみてみると、4月に入り右肩上がりで消費マインドが上昇している。消費者は、来る夏に向けて準備を始めているようだ。
夏に気温が1度上昇すると、5000億円消費が増えるといわれるが、気象庁のエルニーニョ監視速報では、南米ペルー沖の太平洋海面水温が高くなることが予測され、5年ぶりにエルニーニョ現象が発生する可能性があるという。エルニーニョ現象が発生すると日本は冷夏になる。今年の日本は、観測史上一番の冷夏となった1997年以来の低温度になる可能性もあるという。第一生命経済研究所によれば、大きな被害をもたらした93年の冷夏と同じ規模になれば、経済成長率を0.9%近く押し下げるという。
4月から始まった消費増税により、個人消費は落ち込んでいる。再度「MACROMILL WEEKLY INDEX」の「使ったお金」を見てみると、ゴールデンウィーク前半週の平均個人消費金額は、前年に比べ1200円の大幅マイナスとなっている。政府は夏にかけて消費が増えていくことを見込んで4月増税を実施したのかもしれないが、その思惑は外れ、さらに冷夏により予測不能の消費マインドの冷え込みが起こる可能性がある。アベノミクスにとっても、今年の冷夏は大打撃になりかねないのだ。
(文=鈴木領一/ビジネス・プロデューサー)