デフレ脱却を目指すアベノミクスにとって、円安誘導は主要目標の1つ。その政策を支援する日本銀行のインフレ目標2%達成への姿勢は揺るぎなく、今年もさらなる追加金融緩和が行われるとみられており、したがって円安基調は続くことになる。
一方で経済成長の鈍化などが懸念される新興国事情やEUの動向など、外国為替相場にとってのかく乱要因がある。より安全な円を求めて円高に傾く局面もあり得るという指摘は多くの市場関係者から聞かれるが、年央にも米連邦準備理事会(FRB)が利上げに踏み切るとみられる米国の状況などを勘案すれば、一時的な円高はあってもトレンドとしては円安になるとの見方が強い。
この円安が続くことで原材料費が高騰し中小企業は打撃を受ける、という報道が多い。事実だが、2013年頃の円高展開時は、円高で輸出が伸びず下請けの中小企業は打撃を受けている、という報道が頻繁に繰り返されていた。円ドル相場が急激に上下すれば影響が出るのは当然のこと。とくに企業体力の弱い中小企業ほど経営を圧迫するが、それがすべてであるかのように報じるマスコミ報道に対し、中小企業経営に詳しい関西圏の大学教授は次のように疑問を投げかける。
「何割かの厳しい業種だけを取り上げ、騒いで関心を呼ぼうとするマスコミの姿勢は、消費マインドを冷やすだけ。中小企業の経営者は影響が軽微でも聞かれれば『厳しい』としか答えようがなく、本当に実態を表しているのか疑わしい」
●3回目のバブル到来か
注意すべきは、円安と同時進行する株高だ。双日総合研究所副所長でチーフエコノミストの吉崎達彦氏は、東証一部時価総額が名目GDPを超えるとバブルであるとの経験則から「この法則が昨年11月から適用できるのではないか」と指摘する。これまで、東証一部の時価総額がGDPを上回ったのは、1988~90年、05~07年の2回だけ。いよいよ3回目のバブルがやってくるとみられる。
現状の名目GDPは484兆円に対し、昨年11月末の東証一部時価総額は505兆円。12月10日には509兆円、年末も505兆円とGDPを上回っている。3年前の時価総額は251兆円だったので、短期間で倍に膨らんだことになる。
「今回の逆転現象が1回目のような大型バブルになるのか、2回目のミニバブルで終わるのか現時点では判断できないが、経験的に一度ハードルを越えれば1年以上は続くことになる」(吉崎氏)