4月9日、最高裁判所第一小法廷(山浦善樹裁判長)が、子供を持つ親の責任を限定する画期的な判断を行いました。
事件は2004年、小学校校庭横の道路をバイクで通行していたお年寄りが、当時11歳の子供が蹴ったサッカーボールを避けようとして転倒し、その後、死亡したというものです。お年寄りの遺族が子供の両親に対し損害賠償請求訴訟を提起し、二審では子供の過失を認め、法律上「子供の監督義務」があるとされる両親に約1100万円の賠償責任を認めていました。
しかし今回、最高裁は次のように判断しました。
「本件ゴールに向けたフリーキックの練習は、上記各事実に照らすと、通常は人身に危険が及ぶような行為であるとはいえない」
「親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は、ある程度一般的なものとならざるを得ないから、通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない」(ともに判決原文)
要するに、以下のように判断をしたわけです。
・フリーキックの練習は普通に考えれば、即、人に危険を及ぼすような行為ではないから、子供のそばで直接監視している時以外は、親の指導監督といっても「ボールを蹴る時は人に当たらないようにしなさい」「ボールを蹴る時は道路に飛び出さないようにしなさい」といったように、一般的な注意しかできないはず。
・そういった「普通に考えて人に危険が及ぶはずもない行為」が原因で、万が一損害が発生してしまった場合には、具体的に例えば「ゴールネットやネットフェンスや側溝を超えて道路に飛び出すほど強くボールを蹴ること」までを具体的に予測していたわけではない限り、親は監督責任を負わない。
●法律上の「親の責任」
この判断に対して「当たり前ではないか」と疑問を抱く方も多いかと思います。
まず、民法は人に損害を与えた場合を不法行為として、損害賠償責任を規定しています。ただし、なんでもかんでも損害賠償責任が成立するわけではなく、未成年のうち、まだ自分の行動の責任についてしっかり理解できる能力がない年代(概ね12歳以下の年代と考えられています)が不法行為を行っても、賠償責任はありません。もっともこの場合、その未成年の親が未成年に代わって賠償責任を負うことになります。