「西村氏は市長選で自民系の元県議ではなく、泉市長を推そうとしていた。そして、この元県議のくら替えを好機に、自分の影響力拡大を図って子飼い秘書を県議に押し込もうとした。そうなれば、市議の存在は邪魔でしかない」
しかし、選挙は西村氏の思惑通りには運ばなかった。追い落としを図ったこの市議は次点と1000票差で辛くも当選。元秘書は約4000票の大差をつけられて敗北した。ある国政関係者は、こう指摘する。
「今回の統一選で、兵庫県自民党は単独過半数獲得に失敗した。今後、推薦しなかった無所属候補などの取り込み工作が進められる。明石にはこの市議以外にも、返り咲きを果たした民主系の元市長など、自民が取り込みを狙う“弾”は複数ある」
西村氏としては、彼らに配慮せざるを得ないだろう。そして、それはこれまで水面下で手を組んでいた泉市長を切り、元県議の支援に回らなければならないことを意味する。
「候補者擁立を発端とした、お膝元での混乱を、どのように収拾するか。西村氏が本気で今後、上を狙うのであれば、どのように動くべきかはわかっているはずだ」(同)
果たして西村氏は、どのような選択を下すのか――。
ドロ沼の兵庫12区は痛み分け
昨年来、自民党の二階俊博総務会長が介入するお家騒動が継続中の、兵庫県最西部に位置する兵庫12区。主役は元民主党で、現在は自民和歌山県連に所属する山口壮代議士と、祖父・父の地盤を引き継ぐ戸井田真太郎氏だ。
事の発端となった昨年12月の衆議院議員総選挙では、二階氏が支援する山口氏が、麻生太郎副総理や自民県連が支援する戸井田氏の約2倍の票を獲得し圧勝。しかし、その後行われた赤穂市長選では、県連が推す候補が山口氏の推す候補を退けた。そして統一選では山口氏の生まれ故郷、相生市でバトルが勃発した。山口氏は、かつて支援した民主系現職を切り捨て、独自に後援会員を擁立。これに対して県連は女性市議を公認。選挙戦は現職を含めた三つどもえの激戦となった。
当初は山口氏の後援会員有利が伝えられるも、ふたを開ければ現職が2人に200~300票差で辛勝した。ある自民県連関係者は「正直、勝てると思っていたし、過半数死守のためにも勝たなければならなかった。この敗戦は痛すぎる」と肩を落とすが、山口氏にとっても子飼い候補の落選は本丸落城に等しい敗戦で、痛み分けといえる。また、リベンジを誓う戸井田氏は、姫路市選挙区で弟が定数8人中2位当選を果たし、存在感を示すことに成功した。目下、地元では山口氏の国替えの噂も囁かれる中、本拠地での敗戦に加え、対立陣営の勝利が情勢に微妙な影響を与えることは必至で、今後の政局からますます目が離せなくなっている。
(文=編集部)