長崎の教会群は、全部で14の構成資産からなる。キリスト教の繁栄と弾圧を示す「日野江城跡」「原城跡」、禁教時代の継承を示す「平戸の聖地と集落」、解禁後の復帰を示す「黒島天主堂」「天草の崎津集落」などだ。
そのうち13が長崎県内で、長崎市からは「大浦天主堂と関連施設」「出津教会堂と関連施設」「大野教会堂」が選ばれている。
産業革命遺産、長崎の教会群と、2年連続で世界遺産登録が実現すれば、「原爆投下・核廃止」で世界に知られる長崎の国際的な知名度は、これまで以上に高まることになる。かつて、鎖国中の日本で唯一、貿易の窓口だった長崎は、再び国際都市「NAGASAKI」として脚光を浴びることになるかもしれない。
ハウステンボスと世界遺産で、外国人観光客の人気スポットに
世界遺産の観光波及効果は絶大だ。14年6月に世界文化遺産に登録された群馬県の富岡製糸場の場合、14年11月の観光客数は17万7071人で、前年同月の3.5倍以上となった。13年度は年間31万4000人だったが、14年度は9月までの半年間で70万人に達している。
長崎はどうなるだろうか。県の観光統計によると、14年の観光客ののべ人数は3130万2822人で、対前年比5.5%増となり、10年ぶりに3000万人の大台に乗った。
ハウステンボスへの来客の大幅増、長崎市の夜景が12年に「世界新三大夜景」に選出されたことなどが要因だ。のべ外国人観光客数は、12年の78万人に対し13年は91万人と、13万人増加している。地域別では、韓国、台湾、アメリカ、中国、香港の順で、香港は対前年比1.6倍と大幅にアップした。とはいえ、外国人観光客の占める割合は、全体の3%にも満たない。
「逆にいえば、まだまだ掘り起こしの余地があるということです。世界遺産登録を機会に『世界のNAGASAKI』をうまくアピールしていけば、アジアを中心として爆発的な人気を集める可能性があります。和華蘭(日本・中国・オランダ)が融合した独特の異国文化を持つ長崎には、グルメ、自然、歴史遺産など豊富な観光資源があります。長崎市内の坂本龍馬関連施設やグラバー園、中華街、ハウステンボス、雲仙と小浜の両温泉、島原の城や城跡、平戸の新鮮な魚介類など、外国人受けしそうなものばかりです。そこに世界遺産ブランドが加われば、鬼に金棒です」(同)
今年5月に開港40周年を迎えた長崎空港は、台湾、香港、ハルピンなど国際チャーター便の誘致に積極的で、14年度の乗降客数は15年ぶりに300万人を突破した。22年には、九州新幹線の西九州ルート(博多~長崎間)が開通する予定だ。NAGASAKIは、そういった追い風を生かすことができるのだろうか。
(文=編集部)