一方、貸し手からすれば1カ月のうち20日間稼働させると40万円(マイナス手数料3%)という収入で、25万円の家賃で賃貸するよりもかなり収益が上がる。利用者との鍵の受け渡しや清掃の手配などは、専門の代行業者がいる。彼らに任せておけば手間いらず。実質的に賃貸経営と変わらない。
Airbnbは一日単位で収益が上がるので、「募集に3カ月かかった」「フリーレントで最初の2カ月は収入なし」というようなことにもならない。管理費や固定資産税分によって運用成績が赤字になる確率も小さくなる。
一方、今や日本はインバウンド(外国人訪日客)がブームで、今年は1800万人に達するという予想もある。ホテル不足は全国的な現象で、建設計画もあるが、増大する需要に追いついていないのが実態だろう。
そういった状況の中で、国内不動産業界にとってAirbnbの普及は一見、需要と供給がマッチした「Win-Winの関係」に見える。増える一方のインバウンドをAirbnbによる民泊で吸収すれば、「爆買い」をさらに呼び込めるのである。
新たな問題も
しかし、これには問題もある。
「日経ビジネス」(日経BP社/7月27日号)の記事『中国人マンション“爆買い”の弊害』によると、湾岸エリアのタワーマンションを購入した35歳の男性が、毎夜のごとく隣戸で行われる中国人たちの宴会に業を煮やして調べてみると、Airbnbで貸し出されていた、というエピソードが紹介されている。管理人に訴えてもらちが明かず「売却も考えている」という。
タワーマンションにおける外国人の「マナー違反」は、最近随分と話題になっている。エントランスロビーで宴会をやってみたり、パーティルームで期間限定のバーを営業してみたり。あるいは本来は遠方から来た家族や親戚を泊めるためのマンションのゲストルームについて、堂々とAirbnbで利用者募集が行われているケースもある。もちろん、そのマンションの管理組合は関与していない。
では、今回の女児転落事故は、今後のAirbnbの普及にどう影響するだろう。
自宅でない場所で反復継続して旅行客を宿泊させれば、旅館業法違反だろう。しかし、現実には厳しく取り締まられている形跡はない。自民党の一部議員はAirbnbを合法化するべきだと考えている。現に、国家戦略特区では民泊に関する規制を緩める動きがある。しかし、まだ決まったわけではない。
所管は国土交通省と厚生労働省。うがった見方をすれば、インバウンドを増やしたい国交省は規制を緩めたいと考えるはずだが、民泊を広げても権益を増やせなさそうな厚労省は消極的ではないか。