(光文社/坂口孝則)
国民的なマンガ『ドラえもん』の登場人物たち、主に野比家の人びとの行動や思考法をベースとして、人生に必要な「お金」について、わかりやすく解説した一冊となっている。そこに書かれている内容は、
「住宅は、持ち家ではなく賃貸で」
「生命保険、医療保険は加入不要」
「結婚はできるだけ早く」
など、一見すると、私たちの常識とはかけ離れているようにも思える内容が満載。そこで今回、「人生を踏み外さないための、お金のカラクリ」について坂口氏に聞いた。
ーーまず、なぜ『ドラえもん』をモチーフに、お金の本を書こうと思われたのですか?
坂口孝則氏(以下、坂口) 『ドラえもん』には、人生というか、人間の普遍的な部分が色々なかたちで描かれています。そして、私はこれからの世の中、すべての人が、お金をどう稼ぎ、有効に使っていくのかを真剣に考える必要があると考えています。そのためには、「お金力」いわゆる「マネーリテラシー」が大切になるのですが、『ドラえもん』には、そのマネーリテラシーが身に付くエピソードがたくさん盛り込まれています。
ーー各章の冒頭、または文中に、『ドラえもん』のエピソードが挿入されているので、具体的なイメージが浮かびますね。仮にそのエピソードを知らなくても、登場人物はのび太をはじめお馴染みのキャラばかりなので、とても読みやすいですね。
坂口 私が単に『ドラえもん』が大好きというのが、こうした本になった一番の理由なんですけど(笑)。
●持ち家or賃貸
ーー『野比家の借金』は、全6章立てで、1章と2章は「持ち家」と「賃貸」がテーマとなっています。
坂口 家は人生で最もお金がかかるテーマですので、詳しく書きたかったのです。
ーーマネー関係の本はすでに類書が山のようにあり、この「持ち家or賃貸」というテーマも数多くの本が取り上げていますが、大体は、損得はほぼ同じで、あとはその人の価値観次第、といったあいまいな結論になっています。ところが、本書では明快に「賃貸」が薦められていますね。
坂口 本の中でも書きましたが、住宅の購入とは、不動産投資をするかどうかの問題だと考えています。持ち家を購入して得をするケースというのは、購入してから、地価あるいは不動産価格が上昇する場合に限られるのではないでしょうか。それは、経済が右肩上がりに成長していったバブル以前の時代では、確かに経済合理性があったと思います。しかし、経済はデフレ下の低成長時代に移行し、これから少子高齢化が本格化するという日本経済にあって、その合理性が今後も妥当なのかどうかは、大いに疑問となるところでしょう。
ーーなるほど。
坂口 私の主張は、資産を買うという行為は、その資産の価格が将来的に上がるのか下がるのか、どうなるかがわからない以上、ギャンブルに等しいという前提に立っています。それならば、大きなギャンブルになってしまう持ち家購入よりも、リスクの低い賃貸を選択するほうが安全ではないか、という結論となります。類書でもいわれているように、持ち家と賃貸のトータルの出費が変わらないのであれば、よりリスクの低い賃貸を選ぶほうが望ましい、という言い方もできるでしょう。