成年後見人とは、「代わりにハンコを押す人」
お母さんが認知症になっても、普段の生活費や医療費、介護費などでお金は必要です。そのお金をお母さんの口座から出せなくなると、とても困ってしまいます。
では、どうしたらいいのでしょうか。
そのようなときは「成年後見人」を立てることになります。成年後見人とは、一言で言うと「代わりにハンコを押す人」です。本人の判断力がなくなると、さまざまな手続きができません。書類にサインして押印することができなくなるのです。たとえば、5歳の子供に、契約書類にサインさせることはないでしょう。認知症で判断力がなくなると、法律上、幼い子供と同じ扱いになってしまうのです。
つまり、相談者のお母さんは、お金を引き出すための書類にサイン・押印できなくなり、お金が引き出せなくなったのです。成年後見人を立てれば、お母さんの代わりに書類にサイン・押印して、お金を引き出せるようになります。
ほかにも、施設の入所契約、年金や保険などの役所の手続き、さらには自宅の修繕や不動産の売買など、成年後見人はこれらの書類に法律上、正式な権限でお母さんの「代わりにハンコを押す」ことができます。ちなみに、成年後見人は家庭裁判所に指名してもらいます。
誰が成年後見人になる?
誰が成年後見人になるか、実はこれが問題です。
相談事例では、娘さんがお母さんの成年後見人になるのが理想でしょう。そうすれば、これまでと同じように生活が続けられます。しかし、実際は弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家が成年後見人に選ばれることが多いのです。実に4人中3人は、親族以外の専門家が家庭裁判所から成年後見人に選ばれています。
つまり、認知症でお金を下ろせなくなり、成年後見人をつけると、それまで家族でやりくりしていた親のお金を、赤の他人の第三者が管理することになる可能性が高いのです。
これには理由があります。
それは、親族が成年後見人になると、本人(判断力がなくなった人)のお金を使い込むことが多いからです。